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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 227


〜クリスの控え室〜
コンコン…
「どうぞ。」
控え室のドアを開けたのは、ネルムを抱いたルカだった。
「よーっす!調子はどうよ?」
「あぁ、悪くない。」
「やっぱセガルドは負けちまったよ。パパはやられっぷりも見事でちたね〜。」
眠るネルムの頬を指でつつき、楽しそうに話すルカ。
「だろうな。」
「勝てんだろーな?」
「無論、リグールを倒して私が名実共に大陸最強になる。」
気負った様子も無く、クリスは立ち上がった。全身から沸き立つ闘志を感じて、ルカはニヤリと笑う。
「クリス、俺様がセガルド以外を応援してやんだ。絶対に勝てよ!」
「ふっ、明日は槍が降るかな。」
「うっせ!観客席から見てっから無様に負けんじゃねーぞ!」
銀髪を靡かせて振り返ると、クリスは背中を向けて歩き出した。
「あぁ、勝つさ。私が勝つ。」

〜リグールの控え室〜

「…」
椅子に腰掛けたリグールは、自分の手を見つめていた。不意に人の気配を感じて、顔を上げる。
「…ジンか。」
「えぇ、私です。」
「困ったもんだ。」
再び自分の手に視線を戻す。ジンが見てわかる程に、リグールの手は震えていた。
「クリスと闘う恐怖か、クリスと戦える武者震いか、自分でもわからん。ただ、震えが止まらない。」
「もしくは、その両方かも。」
優しく微笑んだジンが、近くの椅子に座った。
「俺は、クリスに勝てるか?」
「さぁ、私にもわかりません。」
「…だな。」
「誰よりも強く、誰よりも純粋で、誰よりも高い理想を持った騎士、それがクリスです。」
「あぁ、よく知っている。」
「並大抵の事では勝てないでしょう。」
「わかってる。だが、」
「だが?」
「知りたいんだ。俺が、クリスに勝つために始めた剣の、その答えを。」
「じゃ、それでいいじゃないですか♪結果を、楽しみにしていますよ。」
ニッコリと微笑み、ジンは静かに消えた。
「…行くか。」
震える手で剣を携えて、リグールは立ち上がった。

………
「えーっ、マイクテスト、マイクテスト、こちらジュスガー、」
「聞こえとるよ。」
「真横にいるんだから当たり前だろ。」
「あ〜、お二方、決勝戦はさすがに喧嘩は無しで。」
「うむ、そうだな。」
「わかりもうしたでごわすぅ〜。」
「うざっ!リク・ローファルのそのノリうざっ!」
「ごわすぅ〜。」
「はいっ!長かったトーナメントもついに決勝戦。数々の激闘を制したお二人の戦い、どう見ますか?」
一旦会話を区切り、興奮した様子のジュスガーが、二人に予想を求める。
「どちらも最強だよ。この時代に、どうしてこれ程の人間が二人も生まれたのやら。」
「どっちかを次の世代にとっておきたくなるね。」
「なるほど、その二人、勝つとしたら?」
「うむ、ワシが両名に剣を教えた訳だが、例えるならそう、クリスは火、リグール君は水だな。」
「ほぅ、そりゃあ興味深いな。」
「クリスは攻めで最大限の力を発揮する。対して、リグール君は守りから活路を見出だすタイプだ。」
「二人の印象とは真逆なんですね!」
「どちらも超強力、そして綿密なまでに繊細。互いに一発があり、互いに隙が一切無い。マジでどっちに転ぶかわからん。」
「結局、最後の一言で全部片付けられるでごわすぅ〜。」
「うざっ!お前うざっ!」
「えーっ、あ、はいはい!準備が整ったようです。いきますか?」
「うむ。」
「ごわすぅ〜。」
「リク様、黙れ。」
「んなっ!許してジュスガー君!」
「では参りましょう!!大陸最強トーナメント決勝戦!」
ワァアアアッ!
観客の大歓声の中、東の門が開く。
「東門より…リグゥゥゥルゥゥ・オルグラン!」
ワァアアアッ!
「リグールー!ファイトー!」「あんちゃーん!勝ってー!」
よく通る声の主はサーシャ。孤児院の子供達からも応援が届く。
「続きまして…西門よりぃ…クリシィィヌ・ヴェルナードォオ!」
ワァアアアッ!
「クリスぅ…!リグールやっつけろぉ…!」「クリス様ー!キャー!痺れるー!」
観客席から、一際熱烈な応援を送るアリシスとメリル。
「なんと言うか…凄い気迫ですね…。」
「うむ、歴史に残る勝負になる。」
「だな。我輩もふざけてられん。」
両者は歩を進め、同時に立ち止まった。
「ずっと思い描いていた。この瞬間に、私は恋焦がれていたよ。」
「あぁ…多分、俺もだ。」
リグールの手は、未だに震えが止まらない。相対する者は、最強の好敵手。
「いい勝負をしよう。」
「…勝つのは俺だ。」
「いきましょう!ゴング用意!」
ジュスガーが係りの者に指示を出す。
「…はぁぁ…」
深く、深く、深呼吸をして、リグールは剣を抜いた。「…いざっ!!」
金色の瞳のリグールの発気は、自分の震えと周囲の砂を吹き飛ばした。
「ふふ、尋常に…」
クスッと笑った後、クリスはゆっくりと剣を抜いて構える。
「開始ぃぃぃ!」
「「勝負っ!!」」
ドンッと双方から砂煙が上がった直後、闘技場の中心で両者の剣が激突した。
「なんじゃこりゃ!」
「目で終えんっ!」
目まぐるしく動き、高速で剣を交える両者。観客のほとんどが、剣のぶつかる音だけで観戦している。
「はぁぁっ!」
「チッ!」
甲高い音と共に、リグールが後方に下がってたたらを踏んだ。クリスは一気に前へ出る。
「ジュダ様!リク様!」
「いや無理無理!」
「解説無理無理!」
上下左右から怒濤の攻めを見せるクリス。一方、それを受けるリグールの表情は険しい。
「あ、あんちゃん…」
「リグール…頑張りなさい!」
サーシャの一喝を受けた直後、リグールの眼光が光った。呼吸の隙を突き、剣を受けながら体当たりでクリスの猛攻を止める。
「くっ、」
「まだだ!」
その勢いのまま、リグールは前へ出た。
「いいじゃないかー!その泥臭さ!」
「洗練されたクリス君には、もってこいのよい手だ!」
「おわっ!いきなり解説者らしく!」

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