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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 226

「そんな、僕は…」
「いえいえ謙遜なさらずに。勝ちへの執念、それは、勝利に不可欠なものですからね。さてと、次は私が棄権したためにセガル君は連戦になりますか。」
「あ、はい、そうですね。」
「彼を激励してきてあげて下さいな♪治療中でしょうが話せるでしょうし♪」
「は、はい!失礼します!」
深々とお辞儀をしたランドルフは、医務室へ走り出した。
「…天津甕星をコントロールしようとするとは…やはり貴方が器ですか…。」
ひとりごちたジンは、震える手を見た。
「今なら…まだ…」
「殺せる…か…。」
………
「いだだだだだだ!いだーっ!」
「はいはいうるさいよセガルドくーん!貴方肋骨が折れてるんだからこれは必要なの!」
「お姉さん!お姉さん!違うとこが折れちゃう!内臓潰れちゃう!」
脚を突っ張ったセガルドに、馬乗りになった治療士が光る掌を脇腹に押し当てている。
「ひぃぃぃ!」
「せ、セガル、大丈夫?」恐る恐る声をかけると、猛烈な勢いで顔を向けた。
「無理!俺もう戦わなくていいから!棄権!キケーン!」
「無理無理無理♪勝ったなら試合出なさい♪」
ドSな治療士は、さらに力を込める。
「おぎゃああ!あ?」
「どーよ♪?」
セガルドの体から降りて、満足気に見下ろす。
「痛くなくなった!すっげ!すげーよお姉さん!」
「でしょー♪骨も繋がったし筋肉の疲労も抜いたし、万全で戦えるはずよ。」
「すごい…こんな魔法見た事ない…」
興味津々な様子でセガルドを見るランドルフ。
「魔法とかその他諸々の応用なのよ。ま、これの習得のためにワタシの青春は…」
「あんがとお姉さん!じゃ試合に行くわ!ばははーい!」
「あ、こら、ちゃんと最後まで話を…」
「セガル!頑張れ!」
走りながら拳を突き上げて、ランドルフの声を答えた。
……
「さて、ついにやって参りました。大陸最強の兄弟喧嘩です!」
「うむ、」
「だな、」
「…あの、何か言葉を…」
「多くは語らず。」
「あぁ、おくぁらず。」
「だからその変な略しを止めろバカめ。」
「やぁしぃ」
「やかましいのはお前だわ。」
「………はぁぁ…リグール選手の、入場!!」
ワァアアア!
大歓声の中を、リグールは進む。腰に携えた木刀を確認して、中央に立つ。
「続きまして、セガルド選手の、入場ー!」
ワァアアア!
先程の試合を見た観客達は、セガルドへも声援を送る。
リグールの目の前まで進み、ニカッと笑うセガルド。
「ついに、お兄様を超える日が来てしまった。」
「…」
「何とか言ってよ。」
「余計な話は要らん。」
「ほっほーぅ、じゃ、コイツでやりますか?」
拳を作ってリグールへ向ける。
「うむ、面白い。」
ゴッ!
知らせ合わせていたかのように、額をぶつける二人。ゴリゴリと骨が擦れる音が聞こえそうなくらいに押し合っている。
「ジュダ様、リク様、これは…」
「あぁ、こりゃ…」
「一発決着あるか…?」
観客も静まりかえり、睨み合い額を擦り付ける二人を固唾を飲んで見てる。
「(わ、私の合図で撃ち合うのか…)」
ジュスガーも喉を鳴らし、言葉を出そうとするが、上手く出せない。二人に意識を奪われて言葉の発し方がわからなくなっていた。
「か、かか、かい、」
「…」
「…」
「か、かい、開始ぃ!」
合図と同時にお互い半歩下がり、同じ動作で拳を振りかぶる。
ドゴンッ!
セガルドの拳より先に、リグールの拳が顔面を捉えた。仰け反って足が地を離れ吹き飛ぶセガルド。
「(お、おぉぅ、マジかい、結構自信あったんすけど…)」
頭の中で、そんな事を考えてると、リグールは既に追い撃ちへ入っている。なんとか地に足をつけて踏ん張るが、強烈な腹部の突き上げで再び体が浮いた。
「ぐうぉぇっ!」
「…終わりだな。」
さらに肩でセガルドの身体を空中へ打ち上げて、とどめにヒーローよろしく水平蹴りを決めた。
身体をくの字に曲げたまま魔法障壁まで蹴り飛ばされたセガルド。背中から打ち付けられて地面に落ち、ピクリとも動かない。
「なんじゃい今のは…」
「空中コンボかぃ…」
「け、け、決着ー!リグール選手、兄の貫禄を見せ付け決勝進出ぅー!」
ワァアアア!
「ふん、まだまだ甘い。愚弟め。」
情けない顔でヨダレを垂らしながら失神するセガルドを見ようともせず、リグールは会場を後にした。
医務室に運ばれて意識を取り戻したセガルドは、力の無い瞳で壁を眺めていた。
「し、仕方ないよ。リグールさん達はちょっと普通じゃないし。」
慰めるランドルフの方を見て、セガルドは口を開いた。
「まさか瞬殺されるなんてよ。バケモンだぜアレは。」
「た、確かに。決勝戦、どうなるんだろうね。」
「どっちも人間じゃないからなぁ。はは、最初からクリスとリグールだけでよかったじゃねーか。周りはいたぶられ損だっつーの。」
「まぁまぁ♪国側には色々と思惑があるからね。あ、僕はそろそろ行かないと。決勝戦に向けて魔法障壁の強化に呼ばれてたんだ。」「あいあい、行ってら〜。はぁぁ…ちょっと落ち込むわ〜…」
ランドルフが医務室を出ると、布団をかぶってプルプルと震え始めた。
「…ってかムカつくぅぅぅっ!」
「うるさいっ!」
セガルドの叫びは、治療士の一喝に潰された。

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