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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 225

「(セガル、何を考えている?距離をとるか?動かず迎え撃つか?)」
「ワハハハハ!いだっ!」高笑いに恐怖さえも覚えていたが、迫った雷の一本を背中に受けて、セガルドは前に転がる。
「(なにも、考えていない…?)」
「くっそー!あの雷よりも速く走れるつもりだったのに!」
地面を叩き、立ち上がるセガルド。呆けていたランドルフはクスッと笑った。
「もう、こっちの毒気を抜かれちゃうよ。」
「いや、俺は本気だったんだけどね。それにもう俺の距離だし。」
ドンッと砂煙を上げて、セガルドが一気に距離を詰めた。
「なっ!?ハイシルド!」「そんなんじゃダメだって。おらっ!」
防御魔法で備えるが、構わず紅月を振り下ろされた。魔法の盾は真っ二つにされ、刃を返したセガルドが見える。
「オロチ!」
パンッと両手を合わせる。その瞬間、地中から飛び出した大蛇がセガルドの胴を打ち上げ吹き飛ばした。
「うがっ!」
「ふしゅるるる…呼んだかいボウヤ。」
舌をチロチロと出しながら、オロチがランドルフを見る。
「急に呼び出しちゃってゴメ…」
「邪魔すんじゃねぇよ!」紅月を大槌に切り替えたセガルドが、真上からオロチの頭に振り下ろした。
ドゴンッ!
「うぎゃああん!」
頭が変形する程の衝撃を受け、オロチは強制的に出てきた穴へ押し返された。
観客席の如月は、それを見て手を合わせて「(哀れなオロチ)」と念じていた。
「やっぱり凄いねセガル。オロチ君を一撃で追い返しちゃうなんて。」
「こっちも驚いたよ。召喚術まで使えるようになってるなんてな。不意だったから痛いのなんのって。」
オロチの一撃で、セガルドの肋骨は折れていた。
「もう、これで最後だよ。僕の最強の魔法で。」
「決着、つけようかぃ。」セガルドの瞳が、金色に光を帯びる。魔力とは違う力が、周囲の大気を震わせ始めた。
観客席でマリー、アリシスと並んでジンは二人を見ていた。
「ランド君、禁魔法を使う気ですね。」
「…ジンの…バカ…なんで禁止だか…わかってんの…?」
「返す言葉もありません。セガル君…」
心配そうにセガルドを見る。ジンの手は汗でジットリ濡れていた。
「セガル!いくよ!」
空に掲げた右手をグッと握り締め、ゆっくりと引き寄せる。
「禁魔法、天津甕星!」
空の遥か彼方から星を引き寄せる。術者本人は隙だらけであったが、相対するセガルドは、その場を動かずに大剣を創造した。
「ランド、お前の最大魔法、俺の全てで破ってやるってんだ。」
「負けない!僕は絶対に勝つ!」
「いくぜ紅月!破界!」
背中に紅の翼を創造して、炎を纏い落ちてくる隕石に向かって飛び上がった。
「ぐ、ぅぅ!」
隕石の威力を調整しようとしたランドルフの腕から血が吹き出す。
「ばっきゃろ!本気でくると言ったろうが!」
「セガル!」
既に、自分のコントロールから離れてしまった魔法を見上げた。観客も全員が口を開いて成り行きを見守っていた。
そして、セガルドと隕石が真正面から激突した。凄まじい衝撃波が魔法障壁を震わせる。
「おおおおっ、らぁああああっ!」
巨大な隕石を大剣で受け止める。両腕が吹き飛びそうな衝撃を抑えながら、セガルドの一撃は隕石に亀裂を入れた。
「ここっきゃねぇ!紅月!」
「(おけぃ!)」
背中の翼が生き物のように動いて、無数の鋭い刃へと変わる。紅色の糸のような刃が亀裂に突き刺さり、さらにセガルドは力を込めた。
「うぉおおらぁああ!」
亀裂が広がり、セガルドの大剣は隕石を打ち砕いた。そして、砕いた隕石を強く蹴り、返すようにランドルフへ迫る。
「セガ…ル…」
刃こぼれした大剣は、顔の前で止まっていた。
「う〜、ったく頭がクラクラすんぜ。服はボロボロになるし体に力は入んねーしよ。」
「僕の…負けか…」
「おぅ。しっかし死ぬかと思ったぜ。もー、二度とゴメンだ。」
セガルドは、尻餅をついてランドルフを見上げる。
「もう、俺が守ってやるなんて言えないわな。」
「ありがと、セガル。」
「ちょっと立ち上がれないっす。肩貸してくり。」
微笑んだランドルフは、セガルドに肩を貸して立ち上がった。
「け、決着ぅぅぅ!セガルド選手の、勝利ぃぃ!」
「いや〜、見応えあったねぇ〜。おじさんちょっと寒気しちゃったよ。」
「ランド君もセガル君も本当に強くなったなぁ。我輩達より余裕で強いとか泣けてきちゃう。」
「どちらもこれからが楽しみな若者って事ですかね!皆様!盛大な拍手を!」
大歓声と拍手の中、二人は退場していった。
〜控え室〜

パーンッ!

部屋に乾いた音が響いた。
「ランド君、何故、叩かれたかわかりますね?」
頬を押さえたランドルフの瞳を、真っ直ぐに見つめながらジンは続ける。
「友人に禁魔法を使うなんて…。必要な時にだけ、と約束したはずです。」
「…そんなに…セガルが大事ですか?」
一度も反抗した事の無いランドルフが、ジンへ非難めいた言葉を返した。
パーンッ!
さらにもう一度、ジンは頬を打つ。
「私が心配しているのはランド君、貴方です。勝ちへの執念から、友人を殺しかけていたんですよ貴方は。」
はっ、とした顔をして、ランドルフは俯いた。
「セガル君は、ランド君が思っている程、英雄ではありません。傷付けば血は流れる。傷が深ければ死に至ります。君が勝っていたら、セガル君は死んでいたんですよ。」
「…」
「ランド君、大きな力を求めて、大事な事を見失ってはいけない。」
「…はい…。」
「それと、」
「…はい…」
ジンはニッコリと微笑んだ。
「いい試合でしたよ。二人とも凄く格好良かったです。こんなに凄い弟子が居ると、私もクリスも鼻が高いですねぇ♪」

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