PiPi's World 投稿小説

魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 222
 224
の最後へ

魔導志 224

目前で強く踏み込み、メリルは旋空剣を放つ。その突きを、リグールはいとも簡単に打ち上げた。
「なっ!」
「それではダメだ、強力な攻撃は相手の不意を狙うか、体勢を崩した時でなくては。」
反撃に絶好の機会だが、リグールは再び木刀をダラリと下げ、無防備に立っている。
「お前は、クリスとアリシスの両方の影響を良く受けている。」
「ふぇ?」
「型に嵌まらない自由な動きと、真っ直ぐな姿勢だ。もっともっと強くなれる。」
「あ、あの、」
「では、いくぞ。」
「えっ、わあっ!」
一歩踏み込み、リグールが木刀を振り下ろした。頭上で受けたメリルは、果敢にも打ち返して攻勢に出る。「(なに、なにこれ、リグール様、こんなの、)」
「脇が甘い。」
トンッとメリルの脇腹を打ち、再び剣を交える。
「おいおい、こりゃ、」
「どうしました?ジュダ様、」
「メリル君、ちょっと悔しいかもしれないよ。」
「た、確かに子供扱い、とも見えますが。」
「てか、修行だね修行。剣筋をリグール君の思う方向に導かれてる。」
「メリル君にしたら貴重な体験だろうが、何もココでしなくたってなぁ。」
当のメリル本人も感じていた。
「(悔しい…。悔しいのに…やっぱり凄いです。リグール様!)」
剣を合わせる毎に、メリルの表情が活き活きとしてくる。気付けば、いつまでも続けたい衝動にさえ駆られていた。
「いい感じだ。むっ、」
剣を急激に捻り、さらに風魔法の力を加え、リグールの木刀を強烈に上へ弾いた。
「でも!勝ちたいよ!」
腕が上がったままのリグールに対して、再び突きの構えになるメリル。
「それでいい。正しい判断だ。」
しかし、一瞬の内にリグールは眼前から消えた。首に当て身を浴びせられ、メリルはゆっくりと倒れた。
「もっともっと強くなれ。サーシャのために。」
「決っっ着ぅぅう!」
ワァアアアッ!
「まぁ、そうだろう。」
「残念だけど、メリル君には厳し過ぎたな。」
うんうんと頷き、退場していくリグールの背中と、担架で運ばれていくメリルを眺めていた。
「次も面白いね〜。若手の注目株の対戦だ。」
「騎士団では、剣聖クリス様を師事してジュダ様の再来、とまで呼ばれていたらしいですね。セガルド選手。」
「お前の再来とか。ぷっ、ぷぷっ、」
「うっせ!ランドルフ君もジン君の愛弟子だからなぁ。いい勝負になるのは確実だ。」
「では、どちらが有利と見ますか?」
「難しいね〜。我輩は五分五分かな。どっちも幼い頃から知ってるし両方応援したいんだが。あ、でもアレはランド君の方が強そうかな。我輩も初めて見た時は愕然としたもんだ。」
「アレ?」
「うん、アレ(笑)」
「下ネタかよ。」
「…参りましょう!セガルド選手の、入っ場っ!」
ブーブー!
大きなブーイングの中、セガルドが入場する。気取った歩き方で進み、口には薔薇をくわえていた。
「ノンノンノン、お前らの汚ならしい罵声なんかに負けないのさ。」
「あのバカ…乱心したのかしら…」
薔薇を放ってクルッと回るセガルドの姿を見て、観客席のセフィリアは、頭を抱えた。
「アイツなりの抵抗なのよきっと。どう対抗しようか考え過ぎてアホになっちゃったんじゃない?」
珍しくセガルドをフォローする隣のリリアン。
「はぁ…さすがに恥ずかしいわ。」
溜め息を吐いて、呆れた顔をセガルドに向けた。
「続いて、ランドルフ・アルバトス選手の、入場ぉー!」
ワァアアアッ!
深々とお辞儀をして、闘技場に足を踏み入れる。中央まで歩いていき、セガルドを真っ直ぐに見つめてニコッと笑った。
「セガル、やっとだよ。」「ん?」
「やっと、君と面と向かって戦える。昔から、僕は君に守られてばかりだったよね。」
「子供の頃、そんな約束もしたっけ。」
「あはは、そうそう♪いじめっ子達をやっつけて『僕の兄上みたいに、君のお兄ちゃんになって僕が守ってあげるよ!約束!』ってさ♪」
「うわっ、恥ずかし〜…」「セガルは昔から僕の憧れだったよ。強くて、優しくて、いつも僕の前に立って笑ってた。」
「そう、セガルド様は昔から強くて優しくてモテモテなのさ。」
「ふふ、今日、僕は君に勝つ。勝って君と肩を並べるんだ。」
「そうは問屋が卸さないぜ。俺様は負けるのは嫌いなんだ。」
「本気だよ。僕を本気で倒しにきて欲しい。」
「わーってるよ。」
様子を見ていたジュスガーが、合図を送る。
「試合っ!開始ぃぃ〜!」ゴングが鳴り、セガルドが後方に飛ぶ。ランドルフは両手を広げ、得意の火炎魔法を放った。
「オル・ヘルドラル!」
三頭の火炎の竜が、着地したセガルドに迫る。
「紅月!」
「(おけぃ♪)」
「開!」
使い慣れた刀を創造して、セガルドは一頭の竜に刃を噛ませた。
「おんどりゃあー!」

刀身を伸ばして横薙ぎに振り、一振りで三頭を一刀両断した。
「おぉ〜!あれを一振りで斬るか!さすがだセガルド君!」
「ランド君は既に次の手に入っている!どんどん来るぞ!」
興奮するジュダとリク。さらにランドは複数の火玉を放ち、右の掌を頭上に上げながら、左手を地に付いた。
「にゃろうっ!」
迫る火玉を紅月で割り、地を蹴ったセガルド。真下から砂の壁が突き上がってくる。これはデイルの技だ。身体を反らして避けると、数多の雷が頭上から降り注いできた。
「すっげーよランド!ちょっと楽しいんだけど!」
ランドルフとの間を遮る砂の壁を力任せに蹴り砕き、頭上の雷を一つ一つ見極めた上で斬り開いた。
「これも斬れるかい?」
雷の弓を構え、ゆっくりと引いた雷の矢を放つ。
「スゥラーッシュ!」
紅月を振り下ろし、迫った雷の矢を真っ二つに両断。「さすがっ!でも!」
両断された雷の矢が、背後で遠隔操作された反射魔法に当たって跳ね返ってセガルドに迫る。
「ワハハハハ!」
しかし、セガルドは避けようともせずに笑いながら自分へ全力疾走。面食らったランドルフだが、セガルドの考えを読んだ。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す