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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 223

「ジュダ様!リク様!」
「クリシーヌが攻められている姿は滅多に見れるもんじゃないな。」
「ま、大陸で一番の剣の使い手が剣聖な訳だが、戦闘は剣だけじゃないし?」
何事も無かったように席に座る二人。
「なるほど、戦闘、と言うならばアリシス選手もクリス選手と互角だと。」
「う〜ん、それはどうだろう?」
アリシスの分身を相手に、クリスは剣を納める。
「おっ、だすか?」
「うん?」
斬り掛かった二体の分身が、クリスの見えない刃に斬り伏せられた。
「なんだ今のは。ジュダ、おい、」
「あれは単純に、剣を抜く、斬る、再び納める、だ。それを極限にまで鍛え上げたら、抜き身はもちろん、腕の動作も少し揺れた?ってぐらいにしか見えなくなったらしい。いや〜、我が娘ながら恐ろしいね。」
「うん、ほんとに。同じ時代に生まれなくてよかったよ。」
「これぞ剣聖!クリシーヌ・ヴェルナード!」
続いて残りの分身を片付け、涼しい顔でアリシスへ歩を進める。
「…私…斬ったなぁ…」
「仕方ないだろう。捨て置く訳にはいかないさ。」
「むぅ…本気…出しちゃう…ぞ…」
アリシスの瞳が紅く力を帯びる。観客席で意識を失う物が現れ始めた。
「そうでなくては。」
指先から腕へピリピリと痺れ上ってくる。並の者なら、とっくに石化し息絶えているだろう。
シルヴァ家の始祖、ナスタル・シルヴァが有していた特異の力。聖剣のヴェルナード、シルヴァの魔視、と呼ばれ王家の両翼として隆盛を築いた。しかし、次第に血が薄まるにつれて失われ、一族も衰退していった。
「んふ…♪からの〜…」
右腕を掲げ、アリシスの指先に小さな稲妻が走る。
「…テメギガ・ライド〜ルガ…♪」
クリスの頭上から、強大な稲妻が降りかかる。
「私には通用しないぞ。」
顔色を変えずに頭上へ剣を振り稲妻を切り開く。稲妻は二つに別れて大きな衝撃と共に地面を焼いた。
「アリシス君の強さは、クリシーヌと対極にある。型も無く、師事も要らず、自分の気分で自由に戦う。才能だけなら、クリシーヌよりも上だろうな。」
「ほ〜、お前はそう見るか。確かに、アリシス君はふざけた強さ、と言うのがシックリくるな。」
「だが…クリシーヌの愚直さを、私はよく知っている。」
ジュダの目には、勝者が見えているようだった。
「…むぅ〜…」だんだんと不機嫌になってきたアリシスが、獣のように四肢を地面につく。
「なるほど、確かに本気だな。」
アリシスの動作に反応したクリスは、剣気を昂らせて剣を構えた。
「クリスぅ…死なないでね…」
凄まじい魔力を全身から放ちながら、アリシスの体が光に包まれていく。
「こ、こ、これは、アリシス選手の魔力が地鳴りのように!そして光に包まれていくー!」
「あーちょっとうるさいよジュスガー君。」
「これで決着も有り得る!黙って見てなさい!」
「(え〜…、俺、実況なんですけど…)」
グッと地に伏せた直後、アリシスは四肢で地面を蹴った。高速の光の矢となり地を抉りながら一直線にクリスへ迫る。
「お前が羨ましいよ、アリシス。私には、コレしかない。」
迫る光の矢を見据え、クリスが剣を高く掲げるように構える。その姿は、まるで完成された一つの美しい芸術に思えた。
「クリスぅ…!」
「アリシス!」
振り下ろした剣と光の矢が交錯し、凄まじい衝撃の波が魔法障壁を震わせて砂煙を舞い上げる。
「ど、どうなった…?」
「まさかどちらか死…なんて…」
砂煙の中で、一つの人影が立っている。
「……うぅ…やだ…」
「紙一重だったな。」
既にクリスは剣を納め、地面に倒れ伏したアリシスを見下ろしていた。
「…やだー…もっともっと…クリスと戦いたいもん…まだいっぱい…見せたい必殺技…あるのにぃ…」
「駄々をこねるな。もう体は動かないだろう?」
「う〜…グス…グス…」
「また機会があれば戦える。その時も、今よりもっと強くなってお前に勝ってやるさ。」
「グスン…う〜…うぅ〜…完敗だぁよ…グリズぅ〜…」
鼻水を啜りながら泣きべそをかいているアリシスの頭を、片膝をついて優しく撫でた。
次第に、状況が見えてきた観客達と実況席。
「こ、こ、こ、ここに決着ぅ!クリシーヌ・ヴェルナード選手の勝利ぃー!」
ワァアアアアッ!
大きな歓声に、クリスは手を振って応えてから、アリシスをおぶって歩き出した。
「グリズぅ〜…だいだいだい好きぃ…」
「わかったわかった。私も大好きだぞ。セガルドの次に、だけどな。」
「う〜…憎いぃ〜…片思いぃ〜…」
泣き笑いでクリスにしがみつくアリシス。
「もう回復してきたのか。やっぱり侮れないなお前は。」
クリスも微笑みながら、闘技場を後にした。
「いや〜、一回戦から、素晴らしい闘いの数々ですね。」
「んだんだ。」
「二回戦の第一試合で、大本命の登場だ。」
「リグール選手っ、入っ場ー!」
ワァアアアッ!
大歓声の中、リグールが現れた。腰には木刀を携え、観客席を見回しサーシャを探していた。
「リグール〜♪ここだよー♪」
白虎王と獅子王に挟まれたサーシャが両手を大きく振っている。それを見て、溜め息を一つ吐いた。
「そして、強者デイル選手を破ったメリル選手の入場ー!」
ワァアアアッ!
リグールの雰囲気に圧されて緊張した面持ちで入場するメリル。
「リグール様、胸をお借りします!」
「ん、本気で来るといい。」
メリルが剣を構えると、握った木刀をダラリと下げた。
「さてさて!お二方はどう見ますか!」
「あ〜、まぁ、メリル君、頑張ろう!ってとこかな。うん。」
「右に同じ。応援したいのは彼女だね。」
「つまり?」
「厳しい。」
「厳しいからこそ、応援したい!」
「なるほど!では参りましょう!試合っ、開始ぃー!」
ゴングと同時に、メリルが飛び出す。
「(出し惜しみは無し!持てる全力でリグール様にぶつかって見せる!)」

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