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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 221

「ジン様は、この世界に必要なお方。いくらお父様でも難しいでしょう。」
「(しかし、危険だ。これ程の力、魔界も天界も鬼界も黙っておれまい。)」
鋭い目でサーシャを見ると、震えながら試合を見ていた。
「(か弱き女王なれど、侮れぬ。あれ程の者を従えておるのは仁徳からか。)」
獅子王は、ジンに視線を戻した。
「魔導志に近付く者は殺す。」
「ゴボッ、ゲホッ、く、くく、『今何処に?』と聞いただけでコレですか。益々興味が湧きましたよ。はぁ、はぁ、」
顔を上げたヴェイルに対して、ジンは目を閉じて大気を探るように手をかざしながら言った。
「最早、どうでもいい。今日、貴方は死ぬ。」
ヴェイルは紅雪を呼んだ。
「(紅雪?)」
「(最後まで、ご一緒します。)」
「結構。破界!」
手にした紅雪を回転させ魔法障壁を破る。『触れた万物を塵まで分解する』それが紅雪の能力。魔法も例外ではない。
しかし、不死の肉体でも蓄積されたダメージはすぐに癒える物ではない。紅雪を握ったまま、ヴェイルは地に手をついた。
「随分と、怨みを感じますね。」
いきなり、ジンが告げた。「この魔族がいい。さぁ、我が名の元に。」
「貴方、は、」
ヴェイルは目を見開いて驚いた。ジンの目の前に現れたのは、過去に自分が殺したシムバだった。
「ヴェ…イ…ル…殺す…貴様だけは…殺す…」
「ゲホッ、貴方は最高だ。死者さえも玩具にする術を有しているとは…」
吐血しながらジンを見る。何も感じないかのように、真っ直ぐ自分を見つめていた。
「しかし、これで芽が出てきた、ゲホッ、ゲホッ、簡単に見えて、こんな魔法は並の魔力じゃ使用出来ない。」
ゆっくりと体を起こして立ち上がると、紅雪を構える。
「ふぅぅ、貴方の魔力にも底が見えてきたはずだ。この亡者を還し、私が勝つ。」
事実、ヴェイルの見立ては正しかった。この魔法は膨大な魔力の割に、勝手が悪い。今の現状には不要だった。不死の身を殺すのであれば、頭を潰すに限る。
「殺す…ヴェイル…貴様を殺す!」
シムバが斧を握って斬りかかると、ヴェイルは槍の柄で受けた。
「(出血で目が霞む。彼が動かないなら今は時間を稼ぐしかない。)」
尚も攻めるシムバを、受け流しながら様子を伺う。
そこで、実況のジュスガーがジュダに解説を求めた。「ど、どうでしょうか。この勝負も佳境ですかね?」「さぁ…な。」
「息子がワルになってしまった。」
「なんの話だそれは。」
「昔は優しい子だったんだが…。父として強くなった息子を喜ぶべきか、非情な姿に悲しむべきか。」
「喜んで悲しめばいいんじゃないか?ま、訳も無くジン君がこうなるはずも無いだろうし?」
「だよな!あー心配して損した!心配してたら腹減ってきた!」
「なんなんだよお前は…俺もうコイツやだよ…」
「(私はお二人がもうやだよ…頼むから解説して下さいよ…)」
「まぁそう切ない顔をするなよジュスガー君。コイツの分も私が…おっ♪私の子供を産まないか?」
近くの者に、出前をとらせようとするリクと、通りかかった販売の可愛い女の子を口説きにかかるジュダを見て、もう実況のジュスガーは止めようとしなかった。ついに、諦めた。
「(正直な話、さっきまでと違い解説しようにも次元が違う。死者を操るなんぞ聞いた事も無いわい。)」
「…ジュダ、すまんがどうにかならないか?」
ジンの殺気が一気に膨れ上がるのを察知したリクが、ジュダを見る。
「ここまでだ!クリシーヌ!リグール君!ジン君を止めろ!」
リクの言いたい事を察したジュダは、ジュスガーの拡声器を奪い取り控え室まで届く大声を張り上げた。と、同時にヴェイルの槍がシムバの胴を貫く。苦悶の表情を浮かべて飛散した。
「(よし、傷も癒えてきた。これで…!)」
ジンの様子は変わらない。立ち尽くすように見ていた男は、終わりを告げた。
「最後の戦いは楽しめましたね?終わりだ。」
両腕をゆっくりと広げると、ジンの後ろで空間が歪む。
「くく、貴方の最後ですよ。神魔法、ロルド・ガ・ラーサ。」
先手を奪ったヴェイルが、自分の最強最大魔法を唱える。周囲に数百はあろう槍を召喚して、全ての穂先がジンに向けられる。 
「間隙無く放たれる神族の刃、受ける事も避ける事も出来ませんよ。くく、」
「君にはガッカリだ。自分の実力も、私の力も、見誤ってばかり。」
「…減らず口を。貴方は確かに強かった。が、終わりですよ。ゆけ!」
ヴェイルが放った刃が全周囲から隙間無くジンに迫る。
「…」
「なっ!ゴブッ!」
しかし、槍の一つがヴェイルの胸に突き刺さった。
「(主っ!)」
さらに、ジンに向かっていた刃も、ヴェイルに穂先を向けて迫る。
「(回避を!主っ!)」
「ぐ、おぉぉお!」
紅雪が呼び掛ける間も、さらに降り注ぐ刃が、ヴェイルの全身に突き刺さっていく。右腕と両足も失い、魔法障壁にもたれるように倒れた。
「(な、ぜだ、なぜ、)」
「禁魔法、月読。得意気に魔法合戦をしていた時から、私は君の精神に侵入し始めていたんですよ。」
肉体強化の魔法で全身を強化しながら、ジンは感情の無い目でヴェイルを見る。「あとは、意識をいじるだけだ。魔法対象を操作すれば空間が歪んだように見える。そこで気付けないから君は弱い。」
「(こん、な、化け物が、人間、だと…、くく、笑えて、くる、)」
その時、漆黒の翼がヴェイルの前に立った。
「もう決着だ!やめて下さい!」
テテュスが震える体で立ち塞がるように両手を広げる。目には恐怖からか涙を浮かべていた。
「邪魔ですよ。一緒に死にますか?」

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