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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 213

「俺はいいんだけどよ。親父は堪え性無い…から…?」
隣の獅子王を見ると、隻眼の瞳に涙を溜めながら、フルフルと震えていた。
「娘よ…。そんなにも人界の平和を望んでいたのか…。そうとは知らずに、すぐ戦争、やれ戦争、ワシはなんて愚かな父なのだ。」
「あ、いえ、そういう訳では…」
「聞くぞ!何でも聞くぞ!白虎の頼みなら何でも聞いてやろう!」
「アホらし。俺は寝るわ。白虎、もう内乱は終わってるんだしたまには帰って来いよ。」
盛り上がる獅子王とは対照的に、荒獅子は父親の様子を見て部屋を出ていった。「では、一つだけ。」
「うむ!うむ!」
「人界へ赴き、この国の王、サーシャ様との親善…」
「いや待て、それは…」
「人界は脆弱です。天界、魔界、鬼界、一つとして敵対する事は出来ません。力ある者が数人居ても、世界としては地力が違いすぎます。父上の片目を奪った竜族も、必ず助けに入るとは限らない。」
「しかしだなぁ…。」
「今の人界には、後ろ楯と一定値の魔導技術が必要なのです。」
「人は、短命故に恩義を忘れる。過ぎた技術も危険だ。だが…」
「あくまで、対等に共存を望む、という形でなら、会談に応じてもよい。」
「ほ、本当ですか!?」
「うむ、嘘は言わぬ。そのリグールという男も直に見てみたい。蚊トンボみたいな男だったら、間違えて潰してしまうかも知れぬがな…。」
少し不安になる白虎王であったが、獅子王は目を細め娘の成長を喜んだ。
「今、人界は一番強い者を決めるトーナメントを行っています。せっかくですから、父上と一緒に観戦したいんですが…」
「…一緒に?一緒にか!わかった!明日行く!人界の王にそう伝えよ!」
「え?え?明日?明日ですか?」
「うむ、ワシも白虎と一緒に観戦したいのだ。今まで一度も親子らしい事をしてないからな!」
「急ぎ、伝えて参ります!明日、深緑の森へお迎えに上がりますね!」
「うむ、よろしく頼むぞ。」
「…あの、父上。」
「なんだ?」
「私も、父上と一緒に観戦できるのを楽しみにしております。」
「あぁ、白虎。ありがとうな。」
通信を切り、獅子王は側近を呼んだ。
「明日は人界へ親善旅行だ!荒獅子にそう伝えよ!」「ははっ!」
「グルルル…楽しみだ…」子供のように、瞳を輝かせながら、獅子王は自室に戻っていった。
そして、トーナメントの組み合わせが本選出場者にのみ発表された。
「リグールの野郎、シードに組み合わせに卑怯過ぎだろ…。優勝候補のために試合数を調節したにしても、俺とランドは優勝絶望的だぞ。」
トーナメント表を見ながら、溜め息を一つ吐くセガルド。
「運営側は、賞金の回収に全力を入れてるからね。大本命のクリスさんは、初戦でアリシスさん、次にジンさんかヴェイルさんを勝ち抜いて、決勝で運営側大本命のリグールさんと戦わなくちゃいけなくなってるよ。」
「クリスばっかりあんまりだ…。俺とランドが当たるなら、二回戦だな。」
「今は、一回戦を勝ってセガルと戦う事だけに集中するよ。」
「俺もだ。正直、今はサイの奴なんか気にもしてない。ランド、俺は勝ちに行くからな。」
「僕だって!君に負けたくない、勝ちたいから出場したんだ。」
一回戦
第一試合
デイル対メリル
第二試合
ランドルフ対ダミアン
第三試合
セガルド対ラカゥ
第四試合
ジン対ヴェイル
第五試合
クリス対アリシス
リグールは、第一試合を勝ち上がった選手と戦う事になる。
本戦当日。花火やパレードでお祭り騒ぎの中、金色の獅子王がアルテミ城に入場した。
「獅子王様、遠路遙々と人界までご足労頂き…」
「グルルル…人の王よ、急な来訪を歓迎してくれて感謝する。が、我は形式的な挨拶を好かぬ。自分の言葉で話して欲しい。」
「はい、ようこそアルテミ城へ。どうぞこちらに。」
自ら獅子王を出迎えたサーシャは、獅子王の横へ移動し奥へ促す。一歩後ろを歩く白虎王と荒獅子。
「ほ〜、あれが人の王。えらく美人じゃないか。俺とツガイになってくんないかな?」
「荒兄様。彼女は、我が主の妻です。」
「例のリグールって奴か。白虎に、人の王に、完全に王女キラーじゃねーか。羨ましい逆玉野郎だ。」
「そんな言い方は…」
その時、ドタバタと男が礼服に腕を通しながら走ってくる。
「はぁ、はぁ、し、失礼しました!私がリグールと申します!このような記念すべき日に遅刻とは…サーシャ!白虎王!どうして起こしてくれないんだ!」
「貴方がもう5分、10分なんて言って起きなかったのよ。」
「えぇ、その通りです。父上も兄上も時間は充分にありますから気にしないでしょう?」
「うむ。」
「俺も別に。」
「…面目ございません…」さすがのリグールも、獣王獅子王と荒獅子への失態に小さくなるしかなかった。
そして…
「あー、あー、テストテスト。んん!」
実況、進行のジュスガーが、闘技場の中央へ歩く。
「時間ですね…?…さぁいきましょう!お集まりの皆様!ついに!ついに!人界最強決定戦!決勝トーナメントを開催します!」
ワァァァア!
「解説はお馴染み、前剣聖…ジュダ・ヴェルナードォォォ!」
「ワーッハッハッ!」
立ち上がったジュダは、高笑いしながら周囲に手を振る。
「さーらーにー、もうお一方…ジュダ様と互角の剣の使い手を称えられた男、リク・ローファルゥゥゥ!」
「ガーッハッハッ!」
負けず劣らずの高笑いで周囲に手を振る。
「相変わらずの間抜け面め。」
「お前の方こそ、嫁さん達に尻に敷かれてるじゃないか。」
「お前だってそうだろ!」
「なにを!!」
「やるか!?」
「えー…実況席では、早くもヒートアップしております…。」
「俺の娘なんか大陸最強って言われてっし!」
「うちの娘なんか乳デケーし!」
「なっ!?負け…た…」
「ガーッハッハッ!相変わらず詰めの甘いおと…こ…」
急に、リリアン父の声が小さくなる。視線の先では、笑顔のリリアンとクリスが指をクイクイと自分達の方へ動かしていた。

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