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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 212

「そ、それは、まさか貴女が白虎王様とは知らず…」「ふふ、冗談だよリグール♪お二人にもお願いがあるの。」
「なんなりと。」
「私に…出来る限りの…事なら…」
「私、もっと人間の事を知りたい。だから、しばらくココに住んでいてもいいかしら?護ったり見張ったりしなくていいから、住んでる事だけ内緒にして欲しいの。」
「し、しかし、万が一の事があったら…」
「大丈夫だろ。白虎王様に万が一の事が出来る奴なんて人界に存在しないさ。」「…でも…」
「我が儘なのは、わかってます。時が来たら、自分から帰還をお願いするわ。だから…お願いします。」
頭を下げる白虎王に、二人は慌てて声を上げる。
「お止めください!白虎王様が頭を下げるなど!」
「わかりました…!わかりましたから…!」
「ありがとう。お二人にもご迷惑をかけるわね。」
「悪かったな。クリス、アリシス、これで一件落着だ。」
良かった良かったと言いたげなリグールを、二人はポカンと見る。
「…は?」
「お前は許さんよ?」
「え…?またまた〜♪俺の任務離脱は仕方ない…よ…な…?」
「…」
「…」
沈黙は、否定だった。
翌日。首都ルクード近郊
「るんるるん…るんるるん…♪パッパカ…パッパカ…♪」
珍しく上機嫌で体を揺らすアリシス。
「もう少ししたら私に交替だからな。」
「うぐぐ…」
四つん這いになったリグールは、アリシスを背に乗せて文句も言えず運んでいた。
「いけぇ…リグール…♪音速疾走だぁ…♪」
ムチでリグールのお尻を叩き、上下に揺れるアリシス。
「あいたたた、無理無理…ルクードに到着する前に死んじゃう…」
「散々美味しい思いをしたんだ。これでも足りないくらいだぞ。白虎王様の事はサーシャにも話せないしな。さ、交替だ。」
「ゃぁん…もう交替…?」「あんまりだ…あんまりだ…うぐ、」
ブツブツと呟いてると、クリスがわざと体重を掛けるように股がる。
「行けぇリグール!音速疾走だ!」
「ひぃぃぃ…」
それから数ヵ月。白虎王の様子が気になるのか、リグールは頻繁に彼女を訪ねた。彼女もまた、リグールを快く迎え入れ、何度も体を重ねて人間の話をした。
ある日、訪ねてきたリグールの様子が違った。感情を失っていたのだ。
「リグール…どうしたの?何かあった?」
心配そうに声を掛けながら、いつものようにお茶を出した。
「白虎王様。単刀直入に申し上げます。獣界へご帰還下さい。」
「えっ…急に?理由は?」「私は、これから二度とここに来れません。言う事は以上です。」
「待っ…待ちなさい!」
「何か?」
立ち上がったリグールに声を荒げる白虎王。全くの無表情で彼女を見つめていた。
「どうしたのよ…。」
「…」
「貴方、何があったの?」「貴女に関係ありま…」
「あるわよ!説明しなさい!」
白虎王が心から自分を心配してくれていると感じたリグールは、淡々と話始めた。
「私は孤児でした。そして、同じ孤児院で育った幼馴染みを目の前で殺されました。」
「…」
「その孤児院は、奴隷商に荷担してました。そして、その指示をしていたのが、この国を護るはずの騎士団の将軍でした。」
「…そう…。」
「オランを…ネリーを…みんなを…。俺は許さない、絶対に。そんな騎士団も…それを許している国も…、全部、全部、俺がぶっ壊してやる…」
全ての感情を失った訳では無い。リグールの瞳には、強い憎しみが宿っていた。「…そう、ね。でも…貴方の幼馴染みは、それを望んでいるのかしらね。」
ピクリと反応して、白虎王を睨み付ける。
「綺麗事は要らない。」
「そんなつもりは無いわ。私が言いたいのは、貴方がその亡くなった幼馴染みの子達に、何が出来るかって事よ。」
「…」
「貴方から色々な話を聞いたわ。素敵な話がいっぱいだった。特に、友達や弟の話をしてる時の貴方は、すごく幸せそうに笑ってた。」
「それがなんの…」
「人には、悪い人と良い人がいる。貴方が言ったのよ?どうせ壊してしまうなら、素敵な国を作りましょう?例え、流れた血の上に作られた国でも、みんなが貴方のように笑える世界を。貴方の幼馴染み達が、もう一度、この国に生まれたいと思える世界を。」
「…」
「リグール…辛かったね…。もう大丈夫だよ。」
白虎王の言葉に、瞳の憎しみが和らいだように見えた。自分のするべき事が見えたリグールを白虎王は優しく抱き締めた。
「私が、貴方を護ってあげる。許す、とだけ言いなさい。」
「っ!!それは…」
「我が名は白虎王。今より貴方の式神として、一生を供にする事を誓いましょう。貴方は我に力を。我は貴方の血肉を求める。」
少し間を置いて、リグールは小さく答えた。
「…ゆる…す。」
「契約は成立した。我の全てを、貴方に。」
「ありがとう…ございます…。」
窓から射し込む月明かりが照らすベッドで、二人は抱き合い話をしていた。全てがいつもと同じ雰囲気では無くとも、濃密な時間だった。
「私ね、リグールが作る世界を見てみたい。」
「俺が?」
「うぅん、貴方達、かな?誰よりも優しいサーシャさん、とても賢いジンさん、ちょっと不思議なアリシスさん、凄く真面目なクリスさんに、素直で可愛いって噂の貴方の弟。そして、私の大好きなリグール。私の知ってる人は、みんな素敵で楽しみだよ。」
「…俺達…か…」
相変わらず無表情のリグールでも、白虎王は嬉しそうに抱き締めた。
「いい匂い…貴方が死んだら私だけの物になるんだからね。」
「それは約束します。遠慮なく食べて下さい。」
「サーシャ姫に怒られないかしら?」
「それは…」
「式神の時は、主への敬意を見せるけど…二人の時はこうしたいなぁ。」
「…はい。それも約束します。」
「やっぱり、リグールは一番素敵だよ。」
「………。」

「随分と長〜い回想だったな。途中、小便休憩を挟まないのが切ないくらいだったぜ。ふぁぁ…」
荒獅子が大欠伸をして目を擦る。
「も、申し訳ありません!かくかく然々で説明しても良かったんですが…」

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