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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 209

次に白虎王が目を覚ましたのは、三日後の事だった。辺りを見回して見ても、リグールの姿は無い。
「…ふふ…そうか、こんな厄介事からは手を引くのが利口と言える。やはり人間なんて…」
「……ギッ…」
白虎王の耳が僅かな鳴き声のようなものを捉えた。小屋の外、少し離れた場所で戦闘が行われている。
「…アギャ…ッ」
「ギィッ!」
聞いた事の無い断末魔の声、ゆっくりと起き上がり重い体を引き摺るようにドアを開けた。そこには、凄まじい数の異形の亡骸があった。
「これは…」
「うおおっ!!」
ザシュッ!ザンッ!
「チッ…次から次へと、いい加減疲れた…。」
「ギァァッ!」
「グオッ!」
「うるせぇっ!」
ザシュッ!
リグールは、一振りでゴブリンとオークを切り払うと、後方に下がった。
「はぁ…はぁ…こいつら統制がとれてやがる。頭がいるな…。」
「ギァァッ!ギィッ!」
「うるせぇってんだろ!ぐおらあっ!」
「ギッ…」
たじろぎ下がるゴブリン逹。
「ったく…ちっとやべぇ…。腹も減ったし眠たいし…。狙いは多分、姫君様なんだろうなぁ。」
リグールは剣を片手で構え、逆の手を添えた。
「仕方ねぇ、やるだけやるか。」
「ギァァッ!」
「グオオオオッ!」
一斉に襲い掛かるモンスターの群れに、リグールは剣を突き出し飛び出した。
「秘剣!覇剛突破っ!」
リグールの全身を闘気が包み込み、光の矢となり敵の群れを突き抜けていく。
ピシッ…
「うおぉおっ!っあら?」その時、剣に亀裂が走り、粉々に砕け散った。
「うそぉぉんっ!ふざけんなこの安物がっ!」
「ギギギギッ!」
「グオ!グオ!」
周りを囲むモンスター逹が笑っている。
「笑うんじゃねぇ!」
その一体に剣の柄を投げつけた。

「しかし困ったな。頭はかなりの人間を食って知恵をつけてやがる…。出来るなら此処で片付けたいが…」
「ギァァァァッ!」
モンスター達が一斉に飛び掛かった。

「…馬鹿な人、逃げれば良かったのに。」
耳をすましていた白虎王、虎の姿に変化し駆け出した。
「ぜぇ…ぜぇ…ヤバい…限界…俺はきっちり7時間睡眠派なのに…」
既に二日間、気を休める間もなく戦い続けているリグール。致命的な傷は無くとも、体力は限界だった。
ゴブリンを倒す事より重い目蓋に渾身の力を込め、敵を殴り倒していくが、足元の苔に滑り転んだ。
「ギァッ!ギァッ!」
ここぞとばかりに飛び掛かったゴブリンを、飛び出した巨大な白い虎が吹き飛ばした。
「ぁ…あーっ!」
「いいから乗りなさい!!状況を説明して!」
リグールは躊躇う事なく白虎王の背に飛び乗り、丁寧に状況を説明した。
この群れには頭がいる。理性の無いはずのゴブリンが人間を食らい知恵を付けている。さらに白虎王の力を食らうべく攻めてきている。森から逃げれば近隣の村に被害が出る。

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