PiPi's World 投稿小説

魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 204
 206
の最後へ

魔導志 206

一向に治まらない内乱の中で、白虎王は、強く、美しく、そして心優い女性に成長した。
「父上、兄様達、どうして我ら同族同士が戦わなくてはならないのですか?」
「白虎は変わっておるのだなぁ。話し合いでこの戦を治めたいのか?」
「ハッ、奴等が仕掛けた喧嘩に俺達が下手に出ちゃ威厳も糞もねぇだろ。」
「そうだな。最も、奴等が無条件で降伏すると持ち掛けた所でどうにもならんが。」
「そんな…」
「よぃよぃ、白虎よ、お前がそこまで言うならば、話し合いの席を用意してやってもよいぞ。」
「あ〜?親父、本気かよ?」

「娘の頼みだ、どうして断れるだろう。そうだな…、今日より三週間後にテルメア村で会談だ。中立を宣言している海獣族の村だから問題無かろう。荒獅子、お前が行け。」
「はぁ〜?息子が馬鹿馬鹿しくて行きたくないと頼んだらどうなる?」
「何度も言わせるな。行け。」
「チッ、白虎にだけは甘いんだからよ。それでいいか白虎?」
「はい!はい!ありがとうございます!」
白虎王は、その日の内に病床の母へ報告に行った。これで内乱は終わる。鳥人族の秘薬も手に入る。
首を長くして停戦の報告を待つ白虎王。しかし、深手を負い帰還した荒獅子と、半数以下になりボロボロになった部下達が全てを物語った。
「テルメアは反乱軍側だった。畜生…畜生…」
失った部下を想い、治療を受けながら涙を流す荒獅子。報告を聞き容態が悪化した母、その傍を離れようとしない父、獅子王。自分の発言に責任を感じた白虎王は、自ら戟を握る事を決めた。
獅子王の指示の元、猛虎は大軍を率いてテルメアに侵攻。圧倒的な軍勢に、わずか一晩で廃墟となったテルメアで、血に塗れた白虎王は静かに誓いを立てた。
それから、反乱軍との戦には自ら進んで従軍した。真っ先に敵陣のど真ん中に突っ込み、数々の武功、首級を上げ続けた。いつからか人々は、白虎王を獅子王の愛娘、白く美しく聡明な姫君から、血塗れ白姫と恐れ呼ぶようになった。
それでも彼女は戦い続けた。彼女には、戦い続ける事だけしか出来なかった。
気付けば母は死んでいた。それでも彼女は戦った。一日でも早く内乱を終わらせたいと願い戦って戦って戦った。
そして…
「白虎王だーっ!」
「囲めっ!逃すなっ!必ず殺せ!!」
「おおおおっ!」

「ククク、やはり獅子王の血か。バカで頭から突っ込む事しか出来ん。いや、手勢さえ置き去りにして我等本隊に飛び込むなど獅子王以上の愚図としか思えんな。捕虜の処刑など偽報に過ぎんと言うのに。」
「生け捕りにもできますが…」
「否、殺せと言ったはずだ。首を獅子王に送りつけてやれば奴も血相変えて飛び出してくるだろう。白虎王には戦場で散々好き勝手やられた、その報いだ。」
何百の敵軍に対し、単騎で赴いた白虎王。少しでも時間を稼げば荒獅子の本隊が捕虜を救援できるかもしれない。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す