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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 188

それが自分への問いだと気付くのに時間を要した。
「…あなたは?」
「僕ですか?僕の名は…」
その男は降り注ぐ光の矢の雨を無詠唱で出した暗黒の盾で防ぐ。
「…ヴェルナルド・シルヴァです。あなたも元天使ならば名前くらいは聞いた事ありませんかね?」
テテュスは近頃、天使達の間でよく話しにのぼる名を思い出した。人の身でありながら魔界軍幹部へと成上がった男の名を。
「……まぁ、堕天使のようですし敵ではないでしょう?もし、良ければ共闘しませんか?」
「………」
テテュスは無言で頷いた。


しばらく共に闘ってヴェルナルド・シルヴァと云う男について幾つか気付いた事がある。
まず、この男は噂どおり強い。とてつもなくだ。アークエンジェル大隊を相手にして未だ目に見える傷を負っていない。
そして、もうひとつ。この男は共闘すると言っていたが、己を庇って闘っている。人が良いようだ。
そう分析していくうちに、テテュスはこの男に好意を抱き始めていた。


「…あなたで最後ですよっ!」
ヴェイルは最後の一人にとどめをさした。
集落の生存者は一割に満たず、屍が山を築いていた。
「っ………」
ヴェイルは一瞬、表現出来ない顔をした。
怒りか、悲しみか、それとも…テテュスには判断できなかった。
しかし、それも一瞬だけでもう、元に戻っていた。
「…一応、片付きましたね。え〜と…」
テテュスは自分がまだ名乗っていなかった事に気がついた。
「…テテュスです」
「そうですか…テテュスさん、あなたこれからどうするのですか?」
「行くあてなどないです」
「もし、あなたが神族に敵対する気があるのなら魔界に来ませんか?魔界までは神の目は届きませんしね…」
ヴェイルはテテュスの背後に目を向けた。
「あなた達もどうですか?住む場所くらいなら僕が責任もって用意しますが…」
「なら、頼むよ。俺達は内乱の避難民なんだ。ここ以外、行く場所なんてねぇからな…」
「あなたは?」
「八咫だ。それと、あんたヴェルナルドといったか?俺を魔界軍に加えてくれ。こう見えても白兵戦は得意だ。神族どもに復讐したい」
「…いいでしょう。冥法皇の名においてあなたを僕の直属の部下にしましょう」
「ありがてぇ…ただ世話になんのも気がひけるしな。よろしく頼む」
矢咫は頭を下げた。
「それで…テテュスさんはどうしますか?もし、神族と戦う覚悟があるのならば僕の部下になりませんか?一人加えるのも二人加えるのも同じですからね」
「……お願いします」


魔界軍玉座の間…
光に包まれ、幾人もの人影が魔王の前に現れた。
「魔王閣下…ただ今、帰還しました」
「ご苦労だった、ヴェイル。後ろの者達は?」
レイラの問いに獣族の女達はビクッと反応した。
「彼らはヘルタの生き残りです。そして…」
ヴェイルはテテュスと八咫を見て言った。
「彼女達は僕の新しい部下です」

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