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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 158

「…ご主人様。」
マウアは穏やかな表情でランドルフを見る。
「どうしたの?」
「彼等に敵対する意思はありませんよね?」
「え?よくわかんないけど、今はないかな…」
「わかりました。私は今、現時点で一方的に契約を破棄します。」
「そ、そんな!?」
ランドルフだけではなく、ヴェイルとテテュスも驚いた様子でマウアを見る。
「ご安心下さいな♪少しお暇を頂くだけですから。ご主人様から頂いた魔力を、我が力にするために天界へ行きたいんです。」
「で、でも…」

「はっきり申し上げますと、私は力不足です。今の彼等や、ゼシカにさえ足元にも及ばないでしょう。」
「…」
「天使族は天界のある場所じゃないと力を高められないんです。私は、姉妹達の仇を討ちたい…」
「ぼ、ボクが戦うよ!」
その一言に、ヴェイルは苦笑いを浮かべる。
「いいえ、今のランドルフ君では絶対に敵いません。」
『ランドルフ君』と呼ばれ、既に契約が無効となった事を理解したランドルフ。「でも…マウアさん…」
「大丈夫。私はランドルフ君を護れる力を身に付けて、必ずご主人様の元へ戻りますから…」
そう言い残し、マウアは立ち去ろうとする。
「待ちなさい。わざわざ敵に回るとわかって逃がすと思う?」
「テテュス…」
「残念だけど、そんなに魔力を溜め込んだ天使を天界に行かせられないわ。」
「マウアさん!」
ランドルフが二人の間に割って入る。
「ランドルフ君…」
「どきなさい。邪魔をするなら貴方も…」
テテュスの瞳が鋭く光る。「ふむ、こうなると黙って見ている訳にいかないな。お前はどうする?」
クリスはヴェイルを見る。「さぁ、どうしましょうかね。剣聖がどれ程なのか、試してみるのも悪くない…」
ヴェイルが殺気を漂わせ始めると、クリスは腰に携えた剣に手を掛ける。
「はいそこまで。クリス、大人げないですよ。」
声の主は、タキシード姿のジンだった。
「ジンか。」
「…」
「マウアさん、早くお行きなさいな。」
「待てっ!逃がさな…」
「動いたら、消えて貰いますよ。」
ジンの額には禁断の紋章が浮かび上がっている。圧倒的魔力を感じとったテテュスは、金縛りを受けたかのように微動だにできなかった。
「感謝します…」
マウアは一礼すると、その場から立ち去った。
「マウアさん…必ず帰ってきてね…。」
テテュスが動けずにいると、ヴェイルは不気味な笑みでジンに話し掛ける。
「くく…その魔力…魔導志に関係あるんですか?」
「…」
「勿体ぶらずに教えて下さいよ…」
「…」
「私も魔導志には興味ありましてね…」
「ふぅ、そうですか。でしたら、一つ忠告を差し上げましょう。」
「?」
「貴方が魔導志に近付くならば、アリシスの親類でも容赦なく殺します。この私が。」
「くく…できるんですかね…」
「自惚れは死期を早めますよ。なんなら今…」
ジンの顔から表情が消え、全くの無表情でヴェイルを見据える。

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