魔導志 153
笑うシュダだが、話しを突然変えた。
「そういえば、開会式での挨拶はリグール君に頼もうかと思っているのだが…」
「…断ることはできませんか?」
やっと子供達の束縛から開放されたリグールだが、額に汗が垂れる。
「…嫌かね?」
「…」
「リグールは人前に立つのはは苦手ですから…」
「…しかし、王族なのだから式典などでは立たねばならんだろう?」
「ですが、明日いきなりとなると…」
「リグール…諦めましょう。それにサーシャ様も喜ばれると思いますよ?」
「ぐっ…」
「じゃあ、リグール君。よろしく頼むよ」
そう言ってシュダは退席した。
そこには呆然としたリグールとそれを眺めるジンと子供達しかいない。
「…なぁ、仮面の兄ちゃんどうしたの?」
その中の一人が疑問を口にした。
「…今、リグールの中で大切な何かが崩れ落ちているんですよ」
「ふぅ〜ん」
「ほら、リグール。彼らをちゃんと宿まで送ってあげないと…」
「…んむ、ああ…お前達、帰るぞ。はぐれずついて来い…」
リグールの背中はどこか哀しげだった。
「ふふっ…明日、リグールが何を言うか楽しみですね」
ジンも会場へと戻って行った。
その夜…
城では前夜祭が行われていた。
出席者は貴族や大会に参加する騎士、魔術師、魔法学校生徒そしてリグール、サーシャなどの王族というこの国の国政に関わるほとんどの人々であった。
そして、入口付近にはタキシード姿のセガルドがいた。
「なぁ、何故なんかある度にこの服を着なきゃならないんだ?」
「いいじゃない、セガル。似合ってるんだから…」
どこかそわそわしているセガルドにしっかりドレスを着たセフィリアは答える。
「嫌なんだよな…なんかむず痒くって」
「いい加減、馴れなよ。セガルド」
ゼシカ、イリスもドレスを纏い出席していた。
その時…
「あっ、セガルド見っけ」
「げっ、メリル…」
メリルに今の自分の姿を見られたセガルドは嫌な顔をした。
「セガルドだって最初、気付かなかったよ。式神見て分ったけど…くふふっ」
「笑うなっ」
「…駄目よ、こんな場所で喧嘩しちゃ…」
「アリシス様…」
「…セガルド君…こんばんは…」
アリシスとメリルも普段の鎧姿ではなくドレスを着ている。