PiPi's World 投稿小説

魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 108
 110
の最後へ

魔導志 110

「声…?」
「まだのようですね。少し、昔話をしましょうか☆」ジンはにっこりと頬笑んで話し始めた。
「昔々、ある魔導士の若者がルクードの街を散歩してました。自分の力量に限界を感じては知識で補うに日々。少しづつ嫌気がさしてきた彼は、公園に一冊の書が落ちているのを見つけます。」
「…」
「公園に本が落ちているなんて不思議だと思いながら、誰かが落としたんだろうと思い、とりあえず拾ってベンチに腰掛けました。本には「魔導志」と書かれており、古くさ〜いデザインにも関わらず無性に興味を持ちました。」
「…」
ランドは黙って聞いている。何か言おうにも喉が乾いて言葉が出せない…
「中を見ても別に悪い事はないだろうと思い表紙を開くと、まったくの白紙。1ページ、2ぺージとめくっても何も書いていない。不思議に思い本を閉じようとしたら、頭の中にこの世界の生物とは思えないような声が響きました。ただ一言「解放しろ」と…。本に目をやると、白紙だったはずのページに文字が浮かび上がってくるのです。それなりの知識を持つ彼は頭で危険と判断しつつも目が離せない。何故なら、本の内容が彼自身の知らない知識に溢れている。」
「…」
「彼は震えが止まりませんでした。彼の友人は才気に溢れ、自分より何歩も先を歩いている。これがあれば追い付く、いや追い越せる。おそらく、彼は自分でも気付かず笑っていたでしょう。それが禁忌と知りながらも…」
「そ、その人は…どうなったんですか…?」
「何かに取り憑かれたかのように本に書かれている事を実験し、時には禁断の契約さえ…そしてまた実験。ついに最も許されない領域に足を踏み込もうとします。」
「…」
「彼は知りたかったんですね。全てが…。ま、最後には友人に気付かされてセーフでしたよ。」
「そ、そうですか」
「でも、それまでの代償は高かったんですよ。後天的に魔力を増やす禁断の契約は、彼から嗅覚を奪い、そして…親友の体に一生消えない傷跡を…。後悔ほど優しくない。罪の意識による地獄のような日々…」
「ジンさん…?」
「同じ目に遭わせる訳にはいかないのです。さぁ私に渡しなさい。」
「は、はい…」
ランドが魔導志をジンに渡した。
「ありがとう…これは処分しておきますからね…」
ジンは魔導志を睨み付けながら机に置いた。そんなジンの様子を初めて見るランドは何も言えず見ている事しかできなかった
「ボクは…これで失礼します。わざわざありがとうございました。」
「ふふ、また気軽に来て下さいね。」
先程の様子とはかわり、にっこり笑うジンにランドは胸を撫でおろした。
その後、ランドは暇を潰すように街中を散歩していた。
「あ〜ぁ…これならマウアさんとデートの約束しておけばよかった…。」
主人の傍から離れようとしないゼシカ達、魔族とは違い、天使族は飽きやすく基本、ふらふらと動き回る。「リリーは家の用事だし…セガルはデートだし…」
「おいランド!」
不意に声がして視線を向けると…
「さ、サイ!?」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す