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群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

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群れなして蠢く美しき屍 59


突然の事態に『ご主人様』はただただ困惑するばかり。
幸いにも彼は身を挺して守ろうとした林原のおかげで白い液体を浴びずに済んだが、今の彼に弥生たちを捕まえるような力は存在していなかった。
場が混乱する中、誠は単身男に向かって走り出す。
彼も誠が来たことに気づくが、頼みの綱はみなもがき苦しんでいて何もできない!

「ぅおお・・・らああぁぁぁッ!!」

そこに誠の渾身のパンチが繰り出され・・・このホテルに君臨していた暴君は無様にベッドから吹っ飛ばされた。
興奮冷めやらぬ誠はもっと殴ってやろうと身を乗り出すが。

「いけません、誠様っ!?」
「殺す・・・ダメ、ですっ・・・!」
「・・・っ!!」

彼についてきた3人の美女・美少女たちに取り押さえられ、『ご主人様』は九死に一生を得た。
もっとも助かったと言うにはまだ早いかもしれない。
これから彼には、誠から弥生たちを奪った罰と、厳しい尋問が待っているのだから。

――――

「んっ・・・んん・・・はッ!?」
「よう。お目覚めはどうだい、『ご主人様』?」

聞きなれない男の言葉に目覚めた『ご主人様』は反射的に声の主を探した。
そして自分がどこにいるか理解した瞬間、驚いて絶叫を上げた。
『ご主人様』がいたのはホテルの屋上。
彼はベッドの上で大の字になるように拘束され、ベッドごと屋上の端に立たされていたのだ。
目覚めて早々、いきなり生命のピンチを迎えた男はただただ混乱するばかりだった。

「おいおい、あんまり暴れないほーがいいぞ?
 一応落ちないように美樹たちが押さえてやってるけど、さすがにロープが緩んだりしたら助けられねーからな」
「・・・っ!」

知らない男・・・誠の忠告に我に返った『ご主人様』は、すぐさま身を固くしてそれ以上動かないようにする。
何とか目覚めて早々死ぬという、最悪の展開を乗り越えた男。
最初の危機を乗り越えてホッとしたのもつかの間、突然自分を殺そうとしてきた知らない男に対する怒りが湧き上がり、彼は感情の命ずるまま誠に怒鳴り散らした。

「おいッ!テメエッ!オレにこんな真似をしてただで済むと思ってんのかッ!?
 オレには忠実な女奴隷たちがごろごろいるんだ、オレに何かあったらそいつらがおまえを八つ裂きにすんぞッ!?」
「へえー。ほおー。おまえ、こんな状態になってもまだそんなことが言えるんだ。
 おい、葵。ちょっとこのバカに自分の置かれた立場ってヤツを教えてやれ」
「は、はいっ」

どこかおびえるような女の声が聞こえたかと思うと、『ご主人様』の括り付けられたベッドがゆっくり前へと傾きだす。

「ひ、ひ、ひ、ひいいいぃぃぃッ!?」

落ちる。その恐怖に男が悲鳴を上げる。
だがそれより先に誠は再び葵に命じて、男がベッドごと落下するのを防いだ。
前傾状態から再び垂直状態に戻されるベッド。
それがいったい何を意味するかは考えるまでもない。
そんな男の考えを裏付けるように誠が男に警告する。

「―――わかったか?今のおまえの命は、オレが握っている。
 おまえの自慢の仲間が助けに来たところで、それより先におまえは死ぬ。
 死にたくなかったらオレの質問に答えろ。
 質問に答えなかったりウソついたりしたらどうなるか・・・言わなくてもわかるな?」
「わ、わかった。答える。何でも答えてやるっ!だ、だから命だけはっ・・・!」

己の立場をこれ以上ないほど理解した『ご主人様』。
そんな男に誠は一片の憐みすら感じずにいくつかの質問をぶつけた。
そこには美樹の知る誠はどこにもいない。
彼自身にもわからぬ、静かな怒りに支配された男がいるだけだった。
それから誠の尋問は淡々と行われた。
『ご主人様』の名前は葛原祐司。19歳のフリーター。
コンビニでアルバイト中におかしくなった女たちに襲われ、これを返り討ちにする。
それまでうだつの上がらない生活を送ってきた祐司だったが、次々と襲い掛かる女たちを返り討ちにしていくうちに自分が女を支配できる能力に気づいたとのこと。
以来彼はこのホテルを拠点に順風満帆のハーレム生活を送ってきたわけだが、他人の女にまで手を出そうとしたのが運の尽き。
祐司は誠の怒りを買い、ごらんのありさまと言うわけだった。
誠はその話を聞いて思わずため息をついた。つかずにはいられなかった。
ようやく世界がおかしくなってから自分以外の男に会えたと思えば、その男は自分を特別な人間と勘違いしている大バカ野郎だった。
これ以上コイツと話しても得るものなど何もない。時間の無駄だ。

(・・・もしかしたら、生き残った男のほとんどがコイツみたいになっているんじゃねえだろうな?
 さすがにそれは勘弁してくれよ・・・?)

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