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群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

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群れなして蠢く美しき屍 56


捕われの仲間を見捨てるという発言に、美樹たちは愕然とする。
彼女たちは知らなかった。
誠が自分たちを連れているのは、このおかしくなった世界で生きるための捨て駒にするためだったことを。
だからこそ彼女たちは誠が弥生を助けに行こうとしていたのは、それだけ自分たちが大事だったからなのだと都合のいいように勘違いしていた。
普通、こんな手ひどい裏切りを受ければ失望して見捨てるか、逆上して相手に襲いかかるかするのだろう。
だが彼女たちもまたおかしくなっていたためか、美樹たちはこう考えた。
今の誠は正気を失っている。
我に返せば、また前のようになってくれるはずだ―――と。
誠から離れたくない、失いたくない彼女たちはその一心から、誠を正気に返すべく強硬策に打って出た。
新しい女たちと享楽にふける誠を力ずくで止めに入ったのである。
夢中になって次々と女性をむさぼる誠の姿に、イスに括り付けられた捕虜の女性は恐怖に震え。
あれほど誠のモノをほしがっていた美樹たちは、別人のようになった誠を不安そうに見つめていた。
敵方の女3人を裏切らせ、自分に忠誠を誓わせた誠は次の獲物を求めて立ち上がる。
美樹や葵たちを抱くのもいい。
だが今は彼女たちより抱きがいのある女がいる。
そう、イスに括り付けられた捕虜の女。

「―――ヒッ!?」

自分が狙われているとわかってからずっと脱出を試みていた女。
しかしその拘束は緩む気配はなく、かわいそうにところどころ擦り切れて血が流れていた。
近づいてくる誠を前に女は必死に抵抗を続ける。
誠はそれを楽しそうに眺めながら、わざとゆっくり近寄っていく。
抵抗したければ好きなだけすればいい。
どうせそのヒモは切れない。どうせおまえは逃げられない。
おまえもあの3人のように、オレのモノをねだる女になるさ。
狂気と凶気を身体からあふれさせながら、ついに誠の手が捕虜の女の肩をとらえた。

「―――ゲーム、オーバー」

女が悲鳴を上げるより先に、誠は捕虜の唇を奪った。
だがここで予想外のことが起きた。
それはおそらくこの場にいた誰もが想像すらできなかっただろう。

「んぐッ・・・!ぐっ・・・ぐぐかッ・・・!?」
「!?う、うわぁッ!?」

熱い口づけを食らった捕虜の女がガクガクと痙攣したかと思うと、彼女の唇が干からび始めたのだ。
いや唇だけではない。彼女を逃がすまいとつかんだその肩もまた、同じように干からびている。
それは肩から二の腕、唇から顎へと徐々に範囲が広がっていく。
人間にはあり得ない、悪夢のような信じられない変化。
うすうす彼女たちが人間のカタチをした何かだとわかっていても、いざそれを目の当たりにすれば平静になどいられない。
誠は悲鳴を上げてミイラ化し始めた捕虜の女を突き飛ばす。
イスにくくられたままの彼女は哀れ床に倒れ込み、何かを嫌がるようにもだえ苦しむ。

「ゲーッ!ガッ、ウエーッ!」

徐々にミイラと化していくその女は、人間とは思えぬ声を上げて何かを吐き出す。
すると彼女の身体に奇跡が起きた。
全身に回りつつあったミイラ化がピタリと止まり、再び瑞々しい身体を取り戻し始めたのだ。
だがその身体は完全に元に戻ることはなかった。
戻ったのは口とそのまわりだけ。肩のほうはカピカピにひび割れたままだった。
突然起こったミイラ化という現象に誠のみならず、その場にいた美樹たちまでもが驚きのあまり絶句していた。
ゲホゲホといまだ苦しそうに咳き込む捕虜の女。
いったい彼女の身に何が起こったのか?
誠はそれまでの支配者然とした傲慢さを忘れ、恐る恐る彼女がミイラ化していたときに吐き出したものに視線を送る。
そこには白く泡立った唾液があるだけ。
見た限り特に何か問題があるようにも思えない。
次にミイラ化したままの女の両肩を調べてみる。
日照りで干上がった湖の底のようになったその両肩はひび割れ、固くなっている。
およそ人間の身体とは思えない変わりようだ。

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