PiPi's World 投稿小説

群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 45
 47
の最後へ

群れなして蠢く美しき屍 47


まず@は論外。弥生はこのメンバーの中で唯一の移動手段である車を運転できる唯一の人間(?)だ。
車なしで外に出るなど、走行中の車を襲う化け物のような連中の餌食になりに行くだけだ。
Bも除外。このおかしくなった世界で、数少ない情報源を失ってまで弥生たちを助けるなんてリスクの割に見返りが少なすぎる。
となると残る選択肢はAとCなのだが・・・。
戦力差を考えるとCは限りなく可能性が低い。
とは言え、これからのことを考えるとどうしてもCを選択せざるを得ない。
C狙いで行って、最悪Aの結末、というのが現時点のベストだろう。
となれば、その被害を少しでも下げるための努力をするしかない。
思考を切り替えた誠は、美樹・葵・白の3つの駒を使ってこの難題に挑むのであった。

――――

その頃。捕われの身となった弥生と月(ゆえ)は女ゾンビたちを従える謎の男の前に引きずり出されていた。

「離しなさいっ!離してっ!」
「・・・うーっ!だーっ!!」

抵抗を続けていた2人は女ゾンビたちに突き飛ばされ、無様に床に倒れ込む。
痛みに耐えて立ち上がろうとしたその視線の先には。
女ゾンビをくみ上げて作った椅子に腰かけ、女ゾンビを犯しながらこちらを見下ろす男の姿があった。
この男こそ誠以外でこの狂った世界で生き残った数少ない人間の1人。
今回の騒ぎの元凶。その名前を一条和馬と言った。
和馬は自分の前に引きずり出された弥生と月の顔を見ると抱いていた女をゴミのように上からどかし、2人の前に歩み寄る。
彼は値踏みするように2人を眺めると、急に笑顔になって2人に質問する。

「ふ〜ん・・・ずいぶん反抗的だな?・・・イイ顔だ。
 ここのヤツらは従順すぎるから、そろそろおまえらみたいな変わったのがほしかったんだよ。
 おまえら、どこからやってきた?2人だけってわけじゃないだろ?
 他のヤツらはどこにいる?何人いるんだ?」

先ほどまでの帝王然とした男はどこへ行ったのか。
弥生たちは和馬の突然の変わりように、返事をすることも忘れて見入ってしまった。
すると和馬は何かを思い出したかのように立ち上がると、スタスタとどこかに向かって歩き出す。

「・・・っといけねえいけねえ。その前にやらなきゃいけねえことがあるんだった!・・・っと」
「「ギャッ!?」」

どこへ行く気なのかと弥生が思わず振り返ったその時。
和馬は何を思ったのか、自分たちをここまで連れてきた女ゾンビたちに突然強烈なキックをお見舞いする。
悲鳴を上げて倒れる彼女たちに、和馬は何度も何度も容赦なく蹴りを浴びせ、踏みつける。

「てめーら、オレの新しいおもちゃを何乱暴に扱ってんだ、よっ!?
 おもちゃ見つけたときは!丁寧に!運んで来いって!いつも!言ってる!だろー!がっ!!」

言葉が区切られるたびにキックを浴びせられ、悲鳴を上げるゾンビたち。
高校生くらいとは言え、男性の本気の蹴りに蹴られ続けるゾンビは血を吐いてもがき苦しむ。
そのあまりにひどい仕打ちに、弥生たちは彼女らが敵であることも忘れて待ったをかける。

「ま、待ちなさいっ!そのコたちはあなたの仲間でしょう!?
 どうしてそんなひどいことするのっ!」
「だーうーっ!!」
「・・・あ!?何?今の、オレに向かって言ったの・・・?」

弥生たちの叫びに、和馬が蹴ることをやめてゆらりと振り返った。
その瞬間、弥生たちは息を飲んだ。
見てしまったのだ。和馬の目に宿る途方もなく暗い目を。
どろりと濁った闇のような瞳。まるで光の差し込まない洞窟のような目。
口調は明らかに怒っているのに、その顔はまるで無表情。
言動と心がまるで一致していない、ちぐはぐさに弥生たちは言いようもない恐怖を覚えた。

「いー度胸してるねー。捕われの身だってのに、自分らを捕まえた相手の心配?
 いやいや、大したもんだ。コイツらにも見習わせたいくらいだよ」

人間の形をしたナニカがしゃべっている。
しかし弥生も月もその1割も聞き取ることができない。
2人は直感的に理解したのだ。
目の前の男・・・一条和馬は危険だ、と。
がちがちと歯が震え、全身から力が抜けていく中で弥生は思った。

(お、お願い誠様―――!早く、逃げて!
 できるだけ、遠くに―――!ここは・・・この男は、想像以上に危険でした!)

それを最後に、弥生の視界は和馬の瞳のように暗闇に包まれ、その意識は途切れた。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す