PiPi's World 投稿小説

群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 46
 48
の最後へ

群れなして蠢く美しき屍 48


――――

「―――そうか。先生たちはここ・・・最上階のスイートルームにいるんだな?」
「は、はいっ」
「は・・・いっ」

一方その頃。誠たちは残ったメンバーで作戦会議を行っていた。
戻ってきた美樹と葵から生き残りの居場所や特徴、連れていたゾンビもどきの数など思いつく限りの情報を収集し、これからの行動を考えていく。

「しっかしよくもまあ、こんな高いビルの最上階まで行こうと思ったもんだ。
 電気が通ってるからか知らんが、普通こんなところまで調べるか?」
「そ、それは・・・先生が『ご主人様に万が一のことがあってはいけない』って・・・」

その言葉に誠はあきれ半分、納得半分といった様子でため息をついた。
弥生の心配のし過ぎが原因ではあるが、今まで出会ってきたゾンビもどきたちのことを考えればそう思っても仕方ないと思ったのだ。
自動車に追いつく速度で走ったり、時速80キロ以上の速度で車から落ちても立ち上がってきたりするような連中である。
車で逃げるのにでさえ、たいへんだったのだ。
警戒心を強く持っても『ああ、なるほどな』と思ってしまうのだ。
そのあたり、誠もこの異常な世界に慣れつつあると言えるかもしれない。
彼は否定するかもしれないが。
さて話を戻そう。
弥生たちが捕まったのは最上階のスイートルーム。
そこで10〜20人ほどのゾンビもどきを連れた人間の男がいる。
状況を見る限り、弥生と月もそこにいると見ていいだろう。
問題はどうやって圧倒的な勢力差を埋めるかということだ。
こっちは誠を入れても4人。相手はその倍以上。
おまけに人質を2人も取られている。
態勢を整えようにもここから出ればゾンビもどきたちの餌食になるだけ。
誠はいったいどうやってこの状況をひっくり返そうと言うのか?

「・・・とりあえず、敵さんの顔を拝んでみるとするか」

誠は腕を組むこと10数秒。導き出されたとんでもない答えに、美樹たちは顔色を変えて止めに入った。

「だだ、ダメですよ誠様っ!?
 こんな人数で何の考えもなしに突っ込むだなんて!?
 自殺行動もいいところですっ!」
「あそこ・・・危ない・・・!行っちゃ、ダメ・・・!」
「・・・!(首を横に振って誠に抱き着く白)」
「だああっ!?こら、落ち着けっ!
 オレだって別に玉砕覚悟で突っ込もうってんじゃないっ!
 向こうの布陣ってヤツを見に行くんだよっ!」
「・・・『布陣』?」

誠はこう考えたのだ。
生き残りの男は女をはべらしていい気になっている。
おそらく今頃は弥生たちをなぶりものにしながら、自分たちの情報を聞き出しているだろう。
当然美樹の反撃も考え、警戒しているはず。
ならばその様子をうかがい、そこから反撃の糸口を探そうと思ったのだ。
誠の説明に葵たちは自分たちの早とちりに心の底から安堵してその場に座り込んだ。
ちょっと考えればわかるようなことすら考えられない、おバカな仲間たちを心強く思いながら誠はいくつかの注意点を教えてやる。
今教えないと、どこでどんなミスをするかわかったものではなかったからだ。

――――

説明が終わって移動を開始すること30分後。
誠は長い長い階段の上で、ゼーゼーハーハー言っていた。

「ゼーゼー、ハーハー・・・。さ、最上階はまだかー・・・」
「最上階はもうすぐそこです。って言うか、やっぱりエレベータを使うべきだったんじゃないんですか?
 いくら敵に見つかるかもしれないからって、階段で行こうなんてやっぱり無理だったんですよ」
「うる・・・せー・・・。だ、だいたいオレがこんなにも疲れてるのに、なんでおまえらはそんな元気なんだよ・・・」
「そりゃーやっぱり・・・誠様が運動不足だからなんじゃないですかね?」
「う、うるせーよ、体力の化け物どもめ・・・」

実際、葵と白(びゃく)の2人は人間かどうかすら怪しいのだが。
嘆息する美樹の後ろ、疲労困憊の状態の誠に2人は心配そうな様子で主人を気遣う。

「だいじょう・・・ぶ?」
「あー・・・まだ大丈夫だ、心配するなー・・・」
「つらい、なら。おんぶ・・・する?」
「いらんわっ!?つかいい年齢した男が女におんぶされるってどんだけ情けない構図だよ!?
 見てろっ!オレがまだまだ元気いっぱいだってとこ見せてやるぜ!」

男のプライドにかけていらない恥をかきたくない誠は、そう言うなりものすごい勢いで階段を駆け上がっていく。
どうやら弥生と月のことはすっかり頭の中から消え去ってしまったようだ。
階段を走り抜ける誠を見送りながら、美樹は2人に苦言を呈する。

「ちょっと。誠様にあんまり無理させないでよ。
 これからどんなことがあるかわからないんだから。
 ご主人様に何かあったら困るでしょ?」
「・・・!ご主人様、大事・・・!何かあったら、困る!」
「すぐ、追いかけ・・・る!」

誠のピンチとあっては落ち着いていられない。
葵と白は急いで誠の後を追った。

「やれやれ・・・あのコたちも悪いコじゃないんだけどなー。
 どれ、私もそろそろ追いかけますか・・・っ」

不器用ながらもかわいい仲間たちにちょっとだけ苦笑しながら、美樹もその後を追う。
その速度は20階以上ある階段を上ってきたとは思えない、俊敏かつ元気あふれる動きであった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す