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群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

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群れなして蠢く美しき屍 33

「・・・・・・」

宮崎(仮)と黒髪にジャスチャーで『音を立てるな』と指示して外から中の様子をうかがう。
店内の電気はつけっぱなし。
狂った女に襲われたのか、店内はシンと静まり返り、床には商品が散らかっていた。
あの忌まわしい肉の繭らしきものは見当たらない。
誠はそのことにちょっとだけ安堵しながら、宮崎(仮)たちと店内に入る。
静まり返った店内に、自分の心臓の鼓動と仲間たちの息遣いがやけにうるさく聞こえる。
誠たちはレジ裏、トイレ、事務所など死角となっていた部分までしっかりと見、
このコンビニに誰もいないことを確認したのだった。

「・・・ふあぁっ」

恐怖と緊張から開放され、思わずしりもちをつく誠。
それを見ていた宮崎(仮)と黒髪があわてて彼を助けに入った。

「あ・・・う・・・!」
「だ、だいじょう・・・ぶ!?」

つたない言葉と伝えられない言葉で心配してくれる美女2人。
その優しさに仲間のありがたみを感じつつ、誠は笑顔でこう答えた。

「大丈夫。ちょっと腰が抜けちゃっただけだから。
 それより先生たちを呼んでくれない?
 あの様子じゃきっと心配してるだろうから」

その言葉に2人はすごく複雑そうな顔をした。
誠から離れたくないのと、その指示に逆らって嫌われたくないのとで板ばさみになっているのだろう。
2人の様子を見て、誠は改めて思う。
2人とも・・・いいや、誠と行動を共にする女性たちは明らかに何かがおかしくなっている。
その体型は男を魅了するものへと変わり。
その精神は誠なしではいられない方向に変わりつつある。
学校で女子生徒や教師たちがおかしくなったことと何か関係があるのか?
あの男子生徒が変化した肉の繭は?
常識も何もかも崩壊した世界で、誠は生きるために知恵をめぐらせるのであった。
美樹たちを店に入れた誠が最初にしたこと。
それは店のシャッターを下ろすことであった。
普通24時間営業のコンビニにシャッターなんてなさそうなものだが、この店は潰れた店舗を改装したもの。
シャッターは使われることなく、そのまま残っていた。
さらに幸運だったのはまだ電気が切れていなかったことだ。
発電所は国民の生活基盤を支える重要拠点だから、まだ何とか保っているのかもしれない。
当面の安全を確保した誠は、ここでようやく安堵のため息をついて店内を見回す。
店内には多少商品が散乱しているものの、どれも使えそうなものばかり。
近くにガソリンスタンドもあるし、休憩地点としてはこれ以上ない最高の状態だった。

グー・・・キュルルルル・・・

「あ・・・」

ホッとして緊張の糸が切れた瞬間、誠の腹が大きな音を立てる。
それもムリもない話だ。彼らはここまで来るのに神経を張り詰めた状態で右へ左へ走り回ってきた。
そんなことを続けていれば当然体力を消耗していてもおかしくない。
「クスクス・・・河原クン、そんなにおなかすいてたの?」

盛大な腹の音に美樹が笑いをこらえながら訊ねてきた。
弥生も宮崎(仮)も、みんなおかしそうにクスクスと笑っている。
それは全てがおかしくなってから初めて見る穏やかで安らかな表情であった。
そんな中、年長者である弥生が微笑みながら初めて年長者らしいことを言ってきた。

「そうね、ここに来るまでいろいろあったんだし・・・。
 とりあえず食事にしましょう。特に河原君はこれからいろいろがんばってもらわないといけないものね?」

その言葉に誠は『自分に何をさせるつもりなんですか!?』とツッコそうになったが、空腹には耐えられない。
文句を言うのをグッとガマンし、言われたとおり食事をとることにした。
サラダにパスタ、弁当にカップラーメン。
より取り見取りの陳列棚から、誠・美樹・弥生の3人は好きなものを適当に選んで持っていく。
だがそんな中、食べ物に手を出そうとしないものがいた。
あの肉の繭から出てきた宮崎(仮)・黒髪・白髪の3人だ。
特に黒髪と白髪は最初のうちこそ興味を示していたようだが、そのうち飽きて誠にベタベタじゃれついてくる始末。
その行動はまるで動物のそれであった。

「こ、こらっ!?くっつくなっ!」
「あらあら。3人ともずいぶん仲がいいわねぇ」
「あははっ。河原クン、モテ期到来だね〜?」
「さ、狭山さん!先生!笑ってないで助けてくださいよっ!?」

助けを求める誠に、弥生と美樹はおもしろがるばかりで全然助ける気配がない。
なんと薄情なことだろう。結局誠は自力でくっつこうとする2人をあしらうこととなった。
この時、誠たちは何も気づいていなかった。
大きな異変ばかり目の当たりにしたために感覚が麻痺し、小さな変化に気づけなかったのだ。
そして食事の時間。誠たちはようやくその小さな変化が何なのか、気づくことになる。

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