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姫騎士・リリーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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姫騎士・リリーの冒険 55

彼女の脳裏にずっと浮かんでいた“妊娠”のニ文字が急に重苦しい現実となってのしかかって来た。
「どうしたミーヤ、震えておるのか?」
ミーヤは恐る恐るアドバーグを見た。身ごもったとすれば、まず間違い無くこの男の子供だ。
アドバーグは小刻みに震えるミーヤを見て、脂ぎった好色そうな顔を歪めてニタァ〜と笑った。
幼い頃から、いつか現れる理想の男性と恋をし、伴侶となり、子を成し、暖かい家庭を築く事を夢見ていた。
こんなはずじゃなかった…。
ミーヤの瞳から一粒の光る物がこぼれ落ちた。
その後、いつものようにアドバーグに犯し尽くされたミーヤは、仕事を終えてベッドに入ると一人さめざめと泣いた。

それからというもの、ミーヤは日中も仕事中も、ぼんやりと物思いにふける事が多くなった。
「ミーヤさん、大丈夫ですか?最近元気無いみたいだけど…」
「あ、エルンさん…」
エルンもエステアの店で裏方として力仕事をさせられていた。
そうしている限り飯と寝床には困らないし、この店にはオークの彼をどうこう言う者はいない。
彼は客の前には姿を出さず、店の女の子達はフィオを除いて全員が催眠魔法で操られている。
フィオがどういう理由で娼婦になったのかは未だ不明だが、彼女は非常にさばさばした性格ゆえ、エルンがオークでも気にせず接していた。
「わ…私が元気が無い?そんな事ありませんよ〜。あはははは…!」
そう言ってミーヤは笑って見せた。だが、どうも笑顔に無理がある。
「あの、もし疲れてるんだったら少し休んだ方が良いと思います。僕からもエステアさんに頼んでみますから…」
「ありがとう、エルンさん…でも大丈夫です!さあ、今夜も頑張ってお客さん達を喜ばせますよ〜」
「ミーヤさん…」
無理に自分を元気付けて客の元へ向かうミーヤをエルンは黙って見送る事しか出来なかった。

「僕はなんて無力なんだろう…」
エルンは一人、倉庫で頭を抱えていた。
何が原因かは解らないが、自分がもっとしっかりしていればミーヤも気兼ねなく相談してくれただろうに…。
いや、そもそも娼婦などしなくても済んだかも知れない。
そう思うと情けなかった。
「な〜に一人でウジウジしてんのさ」
「わっ!フィ…フィオさん、お店はどうしたんですか!?」
いきなり声をかけられたエルンが驚いて顔を上げると、そこにはフィオがいた。
「もうとっくに閉店したわよ」
窓の外を見ると、東の空がうっすら明るくなってきている。
ずいぶん長い間考え込んでいたらしい。
フィオとは普段あまり話す機会は無いが、オークのエルンにも普通に接してくれる数少ない人物だ。

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