姫騎士・リリーの冒険 41
リリーよりも二つほど年長であり、面倒見の良い性格をしていた。
2人はは部下と上司というよりは、歳の近い姉のような感じで接していた。
それが今は濡れ鼠のような醜態を晒している。
「エリス、私だ、しっかりするんだ」
リリーが励まそうとして声をかける。
その声に反応し、エリスが伏せていた顔を上げ、リリーの方へと視線を向ける。
「リリー様……」
リリーの声にエリスはほんの少し生気を取り戻したように感じられた。
だが、次の瞬間、エリスは腹を抱えてのたうち回った。
「痛い、痛いのー、子宮が、子宮がーー」
しばらく暴れた後、今度は傍にいた衛兵の足元に近寄り靴を舐め始めた。
「お願いです、どうかこの肉便器精液のお恵みを、なにとぞお願いします」
エリスの必死の願いに衛兵はニヤニヤと笑い、リリーはあまりの急な展開に声がでなかった。
「これが精吸蟲の効能よ」
呆けたようにエリスを見つめるリリーに対し、沼の魔女が声をかける。
精吸蟲は蚤を改造して作り出した蟲で、血の変わりに精液を吸い取るのだ。
子宮に居ついた精吸蟲は、精液を確保するために宿主の子宮に針を突き刺す。
突き刺された宿主は猛烈な痛みにのた打ち回ることになる。
その痛みから逃れるためには、子宮を常に精液で満たすか、あるいは妊娠するしか方法は無かった。
「貴方に今入れた卵は、精吸蟲のものよ。あと一日経てば孵化して活動を始めるわ」
そしてショックを受けるリリーに対し、沼の魔女はさらに言葉を続ける。
「でも、私も鬼じゃないわ、吸精蟲の寄生された貴方にぴったりの職場を紹介するわ」
「職場を紹介ですって、貴方昨日は私を処刑するといっていなかったかしら」
確かに昨日は一週間後に処刑すると言っていたはず。
「それについては変更があったの。貴方に対する罪が一等減じられることになって、貴方には新設される囚人部隊の隊長兼任で慰安婦を務めてもらうことになるわ」
「囚人部隊ですって…どうしてそんな物を!?」
アエラルセン王国の軍隊は基本的に領内からの志願者で構成されていた。
数は多くないが、国を守るのに最低限必要な兵力は揃っていたし、志願兵のみのため士気も高い。
いわゆる少数精鋭主義である。
それがなぜ今になって囚人など徴用して新しい部隊を作らなければならないのか。
「どうしてって…増兵の理由なんて昔から一つしかないでしょう。戦争よ」
魔女は言った。