刄者と鬼 7
あれからかなりの時間が経った今、窓の隙間からは少し白んだ空が覗いている。
芹那は自分のありったけの欲と、籐弥がむせび喜ぶ技を最大限に活用し、快楽を貪り続けた挙げ句すっかりご満悦の様子で、籐弥に抱き付いて寝息を立てている。
籐弥は籐弥で、何度も休息を摂らせてくれと懇願するものの、その度芹那に誘惑とも脅しとも取れる様なあの手この手を使われて、赤玉でも出るのではなかろうかと感じる程に搾り取られて、正に精魂尽き果てる寸前の様相を呈していた。
「……や………めて………い…」
いったいどんな夢を見てるのだろうか?とうっすら聞こえてくる、芹那の寝言に耳を傾ける籐弥。
「…籐……て…………い…」
「?????」
「籐弥…やめ………………ない…」
「えっ??」
「籐弥………悪くない………悪かっただけだよ
「……………」
はっと身に詰まされる言葉を聞いた籐弥は、芹那の左耳に付いている赤黒い石を見ながら、芹那との出会いと、一緒に行動するに至るまで経緯を思い出すのであった。
──2年前、秋深まる頃…
「あんまり見た目で決め付ける事はお薦めしないよ…おばさん」
腰に携えた刀を引き抜き、剣先をへたり込んでいる女の眉間へと突き付け、籐弥は何処と無く濁ったように見える瞳で睨み付けている。
そんな籐弥の回りには、呻き声をあげて地面に這いつくばる者達や、口から泡を吹いて倒れている者達が男女問わずに何人もいた。
「このっガキがぁ!!」
「そんなガキに斬られそうになってる気分はいかがですか…物取りぐらいしか脳のないクズが!!」
刀を眉間から離し、軽く振りかぶって女を袈裟懸けに斬りつけ様と刀を降り下ろしたその時だった。
「なっ!!」
刀を持つ腕が、女の首元を掠める寸前のところで固まったまま動かなくなってしまっていた。