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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 25

 あの様子だと今すぐに変調が現れたりとかはなさそうだけども…暫くは様子を見てみないとな。
などと思いを巡らせてた籐弥ではあったが、流石に芹那の最後に一言には少しばかり傷付けられた気分にもなっていた。
 確かにどうとでも捉えろとは口にはしたが、誰も好き好んで生物を殺めてなどいないが、自分の様な人間を増やしたくないがあまりにやっているのだ。と自分に暗示をかける様に心の中で繰り返してはいたが、何故だか自然と涙か頬を伝っている。

 「おかしいな…こんな感情なんてあの時、捨てたはずなのに…誰に何を言われてもこんな気持ちになんてならなかったのに…言葉に気持ちを揺さぶられるなんてさ…」

 ぽそりと呟き頬を伝う物を拭うと、目の前に人影が有ることに気が付いた。 
 「よう。あ、あの時はありがとうな…」

 籐弥の目の前に立っていたのは日向であった。

 「いえ…ところで今帰ってこられたのですか?」
 「ああ、そうだけど。どうしてそんなことを聞くんだ?」
 「それは…その………あの後おかしなことは起きたりとかしなかったのかなと思ってたもので…」
 「ああ、別に何にもなかったぜ。ん?いや、あったかな?」
 「何があったんですか?」
 「そりゃあ…あの後凛華がいつも以上に激しく求めて来て…って、何言わせてるんだよお前は」
 「いや、そんな方面の事を聞いてたつもりではなかったんですけど…」
 「と、とにかくだな、特に変わったことなんてなかったよ。それとも何かい?ガキのくせにそっち方面の話が好きなのか?好きならたんまり聞かせてやるけど」
 「あ、結構ですよ。人並みに興味は有りますけども…」
 
 日向に頭を下げた籐弥は、そのまま何事もなかったかのように日向が歩いてきたであろう方へと歩いて行った。
「やっぱりよく解んねぇ奴だな」

籐弥の意図など理解出来るわけも無い日向は、そのまま自分の部屋へと消えて行ったのであった。

一方籐弥は葵の所へとやって来ており、暫くの間この家に身を置かせてもらえないかと頼んでいた。勿論、目的である芹那の監視をしたいとの旨もキチンと伝えた上での申し出をして。
葵は芹那への監視を行う理由は敢えて聴かずに、籐弥の申し出を快く引き受けてくれた。

「本来なら私はこんなことは言いたくは無いけども、もしもの事があれば…

「そうならない事を願いたいですけども………絶対の保証は出来ませんが、もしもの事があっちゃあいけないんです…僕も刄を向けたくなんてないんです…………暫くお世話になりますから」

葵に深々と頭を下げて、籐弥はその場から離れて行った。



 籐弥がこの家に身を置く様になり3〜4日の間は、特に誰も行動を起こさないどころか、何をするでもなく唯々時間が過ぎるのを待つかのような生活をしている為、流石にこの家は何処から収入を得て生活をしているのかが不思議でならなくなり話を聞いてみると、普段は芹那がこの集落の近辺に存在している別の集落などを回り歩いては、自らの力を使い怪我人の治療をしたり病を患った人の痛みの緩和等をして、それなりに収入を得て生活をしているとのことであった。
 
 なるほど、確かにそうして収入を得て生活をしている鬼の存在を聞いたことがあったなと籐弥は思い返しながら、芹那の後を付かず離れず位の距離を保ちながらも、出かけて行く場所へは必ず付いて行っていた。

「あのさぁ…何時まで家に居着いてるつもりなんだ?…それと、どうして何時も一緒に付いて来るんだ君は?」
「えっ?君って僕のことですか?」
「他に誰がいるとでも?」


言葉は鬱陶しいそうではあるが、聞いている限りでは棘を感じさせない口調に君という単語が芹那から出たことに対して、妙な新鮮さを感じてしまっていたが、やはり芹那から君などと呼ばれると何故だかしっくりは来ていない籐弥だった。

「どっちもあまり深く考えないでください。何時までいるかも、何時も付いて歩いてることも…それより、貴女に君って呼ばれると変な感じかします、どちらかと言えばお前とかおいとか呼ばれてる方がまだいい様な…」
「一応、こっちは気を使ってそう読んでやっただけだよ…お前とかじゃ周りに偉そうに聞こえるだろうから…」

 

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