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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 22

「答えは1つしかないって言っただろ…お前はここで死ぬんだよ」

心臓に突き立てた刀を引き抜き鞘に納めると、断末魔の叫びを上げながら息絶える男。それと同時に、芹那を凌辱し籐弥に首を跳ねられた化物も、一片の肉も残さず蒸発するかの様に消えた。

「…何が?…どうなって…?…助けてくれたの?」

人が斬り殺された惨劇と自分の置かれている状況に呆気にとられていた芹那が、虚ろな目をしたままポツリと呟いた。


そんな呟きに反応することはなく、籐弥は当て身を喰らわせた。

「…今は眠った方がいいんですよ…何にも考えずに…」

ぐったりとなった芹那を背負い上げると、傷の痛む身体を引き摺る様にその場を後にしながら、ある事を考えていた。
それは、闇に身体を傷つけられた人間に起きる異変についてだった。
身体に異変をきたす者もいれば、精神に異変をきたす者もいる。しかし、稀に籐弥の様に何も異変の起こらない者もいたが、自分の家族がそうなってしまった様に、芹那にもいずれは何らかの異変が起きるはずである。

その異変がどの様に芹那に影響するかは解らない。しかし自分の家族がそうなってしまった様に、この世から存在を葬らなければならない程の異変だった場合は、あの時と同じ様に自分は彼女に向かって刄を突き付けることになる…でもそれだけは避けたい。あの時の自分は、自分だけが悲しめば誰も悲しみはしなかった。
しかし、芹那には葵や恵に日向といった悲しむ家族がいる。だからといって異変をきたした者をみすみす放っておけば、最悪の場合、惨劇が起きることは容易に想像が出来る。芹那は普通の人間ではない、鬼と呼ばれる特殊な人間。その確率も高くなる。
知らぬ存ぜぬを押し通してしまえるのならば、そうやってやり過ごしたい…などと考えてしまう籐弥は、自分に少しの苛立ちを覚えながらも、痛む身体に鞭を打ち、なんとか家の前に辿り着いたその時だった。
家を出る前に葵に話した交言葉が頭に過る。

『宝飾の石…たった一度きり奇跡の起きる石』

…奇跡って何だ?何が起きるから奇跡なんだ?あの時は、そんなこと考えている余裕がなかったせいで使うことすら出来なかったけど…起こせるなら、奇跡とやらを起きてみろ…もし何も起きなかったら、その時は……………

何かの意を決した籐弥は、家の庭に芹那を降ろすと刀の鞘に手を伸ばし、宝飾の石を力ずくで引き離し芹那の手に握らせる。

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