刄者と鬼 18
「それは…元々そこに宝飾したあったものですから、それ以外は…」
「じゃあこれが何かは知らないと…」
「ええ………あっ!!そう言えば義父さんが『たった一度だけ奇跡を起こす石』だって言ってましたね…」
「そう…たった一度の奇跡ね…確かにそう言われてる物ね…」
「…それはそうと、そろそろ返してもらいますよ」
どこか影のある笑みを浮かべ、葵は鞘に宝飾されている石を見詰めているのを様子を神妙な顔で見ていた籐弥だったが、刀に手を伸ばすと自分の腰に差す。
「…そう言えば、芹姉達まだ帰ってこないね」
「えっ!!」
籐弥が帰ってきてからそれなりに時間は経っていたが、まだ二人が帰ってくる気配がない。
その事に対して、恵は何気無く疑問を口にしたのであった。
しかし先程の出来事がまた頭を過った籐弥には、何気無いことには感じられなくなっていた。むしろ先程まで考えていた事に、ある種共通する妙なざわつきを今の言葉にまで感じ取っていた。
「…ちょっと出てきます」
こんな時に感じる妙なざわつき程嫌な物はないとばかりに、籐弥は足早に出て行くと、飛び出して行ったのと同じ道程をゆっくりと確める様に歩いていく。
「…いない…そりゃそうだよ、いつまでもいるわけないし…思い過ごしか」
凜華が闇に教われていた場所まで辿り着いたが、日向と凜華は居らず、始末した闇の屍が転がっているだけ。ここに来る道中でも出会ってはいない。勿論、芹那にも。
考えすぎるのは悪い癖だなと思いながら立ち去ろうとしたその時、地面に着いていた引き摺った後が、自分の歩いてきた道とは違う方向に延びているのに気付く。
「これは…?」
また妙なざわつきを感じた籐弥は、慎重になりながら跡の延びていく方へと歩みを進め始めた。
一方、籐弥が引き摺った跡を見付けたのと同じ頃、芹那は光の当たらない場所で意識を失っていた。