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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 16

「…ああ。凜華、怪我はないか?」

「うちは大丈夫。日向は大丈夫?怪我してない?」

「ばっか!!俺が怪我なんかするか」

「さすが。それでこそうちの日向」

「ったりまえだ。お前の日向様だそ」

バカップル的な雰囲気を作り出してくれている二人を冷めた目で見ていた籐弥は、芹那を肘で小突きこの場から立ち去っていく。小突かれた芹那も掴んでいた畜生をその場に投げ捨て、籐弥を追う様について行く。
しかしこの場にいた者達は、この出来事の一部始終を木陰に隠れて高みの見物しつていた物影には気付いてはいない。籐弥を除いて。

「あっ…ありがとな。俺の時も日向の時も、助けてくれてなきゃ今頃どうなっていたか想像ぐらい付くよ…」

照れ臭そうに礼を言ってみると、前を歩く籐弥からは意外な言葉が返ってきた。

「日向さんは生物に刀その物を向けた事がないんじゃないですか?自分の事を刄者と言ってましたが…あの様子だと何時か痛い目に合いますよ」


「……なんでそう思う?」

「話して通じる相手ならあんな動きも構わないでしょうけど…あの畜生、否、あれは世間では闇と呼ばれている魔物です。どう動くか判らない物にいきなり斬り掛かるなんて有り得ませんよ」

「しっしかし、あの場には凜華の姿があってだな───
「それなら尚更あそこに居た人の事を考えて動く!!でないとあの二人は、良くて大怪我、最悪なら死んでましたよ…」
歩みを止めて振り向くと、芹那の言葉を遮る様に行動や考えの甘さを声を荒げて指摘したかと思えば、また申し訳なさそうな表情になり腕を突き出した。

「せっかく治してもらったのに…すいません。…でも気を付けてくださいね、この傷ならまだ軽い傷です…油断や過信があるとこんなじゃ済まなくなりますから…」

自分を守る為に付いた傷と、自分が治した傷。その二つの傷が付いた腕を見せつけられた芹那は、二つが人間や理由は違えど、油断や過信から付いた傷だと解釈すると、返す言葉すら見付けられずにその場に立ち尽くしてしまう。
そんな芹那を尻目に前を向いた籐弥は、言葉を掛けることもせずに、一人歩みを進めて家へと帰っていった。

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