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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 14

そんな籐弥を冷や汗を垂らして見つめる男。
二人の間に妙な緊張感が走ったその時、緊張感を壊すどこか間の抜けた声が割って入ってきた。

「日向も籐弥君も何をしているの?」


声の主は、籐弥の大声に気付いて自分の部屋から飛び出してきた葵であった。その手には、籐鉄を納めている鞘を抱えている。


「何って見ての通り、坊主に刀を突きつけられてって……、おい!!祖母様危ない!!」

「えっ?何?」


日向が声を荒げた時には、籐弥の姿は葵の目の前に迫り、鞘を強引に引ったくる様に奪っていた。


「好き勝手に人の物に触るな!!」
小さな身体の何処からそんな重低音な大声が出るのかと疑いたくなる様な声で、葵と日向を怒鳴り付ける籐弥。そんな籐弥の声と迫力に驚き、自然と瞳に涙が溜まりだす葵と、あまりの迫力に眉ひとつ動かせない日向。
一瞬の沈黙の後、冷静になり目の前で涙をポロポロ流している葵の姿を目にした籐弥は、人が変わったかの様に頭を下げ倒していた。



………………………………………………………………………………

「…で、勝手に刀を持ち出して遊んでる日向と祖母ちゃんを見た籐弥が、大声出してキレたと…」


大声のせいで睡眠を妨害されて、あからさまに不機嫌そうに問いただしている芹那。
その前には、そんな事はないと言いたげな表情の葵、だからどうしたと言いたげな態度の日向、大声に驚いて訳も判らず駆け付けた恵、そして申し訳なさそうに全員に頭を下げている籐弥の姿があった。


「別に私達遊んでた訳じゃないわよ。ねえ日向」

「あぁ。祖母様が鞘に装飾してある石を調べるって言うから、俺は刀を調べてただけだ」

「それなら籐弥に断りを入れてからでいいんじゃないのか?」

「「それは………」」


籐弥の刀を持つ芹那に睨むような視線を浴びせられた二人は、何ともバツの悪そうな表情になり視線を逸らす。
そんな芹那の隣で、もういいですと言う顔をしている籐弥だったが、外から轟いてきた悲鳴と不穏な雰囲気を察知すると、近くに転がっていた木刀を手にし、そのまま外へと飛び出していった。
修羅の様な形相で飛び出した籐弥の後を追い掛けていく日向と芹那。少しすると立ち止まる籐弥の後ろ姿を見つけて、声を掛けようと前に回り込もうとしたその時、空気を掠める音と共に目の前に木刀が伸びてきた。

「迂闊に動かないで…二人共」

振り返らずに前だけを見据えて木刀を構え直す籐弥。

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