刄者と鬼 13
「……んっ!?………ここは…?…ああ、そうだった」
ゆっくり目を覚まし、身体を起こすと、頭からポトリと手拭いが自分の目の前に落ちてきたのを見て、どうして此処に居るのかを思い出す。
辺りを見渡せば、すっかり日も高くなっており、窓の隙間からは光が指している。
こんなに熟睡したのは久し振りだとしみじみ感じ布団から抜け出すと、横で布団も被らずに眠っている芹那に目が行った。
「……一晩中診ててくれたんだ…」
ポツリ独り言を呟くと、起こさない様に芹那を抱えあげる。ちゃんと見るとかなり綺麗な人だし、均等のとれた身体付きだなと感じながら、先程まで自分の眠っていた布団に横たわらせると、そのまま部屋を出ていった。
そして、そのまま外に出ようと廊下を歩いていると、自分より少し背の低い女がこちらへ歩いてくるのに気が付いた。
「…おはようございます、名前は確か…」
「おっ…おはよう、恵だよ。…昨日は…よく眠れた?」
「ええ、まぁ」
他愛もない会話を交わしているだけなのに、恵は頬を赤らめて籐弥を伏し目がちに見ている。
なぜそんな目で見られているのか、自分には判らない為に不思議そうに見ていると、恵が更に顔を赤らめて耳打ちしてきた。
「…昨日見たんだけど……籐弥君って、かわいい見た目なのに…身体付きとか…その辺の男よりも逞しいんだね♪」
「…はぁ?」
なんの事やら?、と呆気にとられていると恵はバタバタと足音を立てて、籐弥の前から姿を消していった。
何とも変わり者ばかり揃った家族だなと考えながら、庭に足を踏み入れると、そこには刀を振り回す一人の男の姿があった。
「…重い刀だな。子供の力で振り回すのには難がある」
「あっ、あれは!!」
男が手にしている刀、それは普段籐弥が携えている愛刀『籐鉄』であった。
それに気付いた籐弥は、男に駆け寄ると有無も言わさず刀を奪う様に取り上げる。
「人の大事な物に勝手に触らないでください!!」
「すまないね。ただ、他の刄者が持っている刀がどんな物か知りたくてね」
「なら一言断ればいいんじゃないですか。貴方だって他人に勝手に刀を触られるのは嫌でしょう?」
「おいおい小僧。あんまりムキになるなよ、たかが刀ひと────
「貴方にとってはたかが刀でも、僕にとっては大切な刀なんだ!!」
奪い取った刀を軽々と、目に求まらぬ早さで切っ先を男につき付け、異様な剣幕で捲し立てる籐弥。