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刄者と鬼
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刄者と鬼 12


それから籐弥自身の事についても、随分と根掘り葉掘り問い質された。知られたくない部分については上手くはぐらかしてはいたのだが…。
相手に聞くだけ聞いて自らの事は黙りでは、話す相手も納得してはくれないと思いも少しは働いた為、何時もよりは饒舌ではあった。
籐弥が話したのは、次の様なことだった。
生まれ育ったのは、ここより遥か東の遠方の街であること。
歩き回る事がやっと出来る様になる程幼い頃から剣術を叩き込まれたこと。
今携えている刀は父親…正確には義父が造り上げた物であること。
母親が鬼であったこと。
家族とは死別しそれ以来、流浪になり、賞金首を捕まえたりしていること。
因みにどうして家族と死別したのかは、言いたくはなかった為に黙秘した。
「これが大人数相手でも冷静に刀振り回してた奴の寝顔かねぇ。…ふふっ」


寝息を立てている籐弥の顔を見ながら、冷たくなくなった額の手拭いを代えている芹那は、賊達に対峙していた時の立ち居振舞いを思い出している。
確かにあの時は、異様に冷淡で年端も行かぬ人間とは思えない行動を平気で行い、殺気に満ち溢れていた表情だった為、妙なざわつきを感じたのだが、今目の前で寝ている顔は何も知らない様な子供そのもの。

いったい、どちらが本当の籐弥なんだろうか?否、どちらも本当の籐弥ではあるのだが、普段は穏やかで優しい人間なのかなと、勝手な思い込みをしていると自然と笑みを浮かべていた。
事実、そんな芹那の思い込みは的外れな思い込みではない事は、籐弥が目を覚ましてから思い知るのである。


「しかし…この傷はいったい何時つけた傷なんだよ?化膿してるわ、開きっぱなしだわ…あと少し処置が遅かったら、最悪腕無くなってたぞ」



誰に聞こえるわけでもないくらいの小さな声で呟くと、溜め息混じりに治癒を施した腕の傷を見て、ここまで治せただけでも感謝しろとでも言わん表情を浮かべている。しかし当の本人は、何も知らないとばかりに穏やかな寝顔を浮かべたままであった。


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