中出し帝国 59
昔は、自身も犯されるようになって、それがさも自然な事象だと必死に思い込んでいたルルだったが、最近になって押さえきれなくなっていた。
起き上がって窓の先を眺めれば、外でシエラが両手で木刀を携え訓練に励んでいる。
そういえばそうだ。彼女はどうして素直に接合令などという法に、素直に従えるのか不思議だった。
郷に入ったら郷に従え?
それにも限度がある。孕む危険が高い行為を、無理に強制するのだ。嫌がらない訳がない。
だとすれば、彼女にも、何か深い闇があるのかもしれない。
以前からこの城で生きている女性達に対しても、ただただ心が痛むばかりであった。
売られてきた娘。この国で生を受けた娘。
そして、ルルがもう一つ心配するのは、自身が幼少の頃、拷問部屋から何処かへ連れて行かれた数人の女性達。いったい今、どうしているのか。生死の報告も来ずに流れてしまったが、ルルは未だに悩んだままだ。
考えていても、メビウスの輪のようにいつもと同じ箇所をぐるぐると巡るだけ。
しかし、考えずにはいられないもどかしさだけが、ルルを窮地へと陥れる。
分かってはいた。行動しなければこの国に変革が訪れない事ぐらい。
「ルル殿?如何致しました?」
いつの間にかまた俯いていたらしい。シエラが窓越しまで近づいていたのに察知できなかった。
「…ぁ…ううん、何でも無いわ。」
不思議そうにルルの顔を覗き込むシエラ。
「そうでしょうか?…表情がお暗いようでしたが。」
「ほんとに何でも無いわよ。……それにしても、貴女の部下、無事に見つかれば良いわね。」
なるたけ好意のある作り笑いでごまかす。
シエラは頭を下げた。
「気遣い、ありがとうございます。」
「…いいえ、そんなことは無いわ。でも良いの?うちの部下に捜索させてる以上、彼女もここに来ちゃう事になってて……その…アレもする事になるのよ?」
腕を組むシエラ。やはり、ここに来るのには躊躇しているのだろうか。
「構いませぬ、メアは発情したら常時それの事しか考えなくなりますし、それは本人も認める程。私がとやかく言う事はありません。」
どうやら違ったらしい。
「…そうなんだ。じゃあそろそろ私は部屋に戻るわ。ありがとね、私を介抱してくれて。」