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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 87

「…私は多くの知識を得ましたが、しかしそれだけと言えばそれだけの事です。今はこの知識が実践で通用するのかどうか試してみたいという思いでいっぱいです。それが無理な望みである事は分かってはいるのですが…」
「ガイア王子、そのチャンスは与えられますよ。きっと、そう遠くない未来に…」
「どういう事でしょう?」
「いずれ分かります」
ババロアは意味深な言葉を残して塔を去った。
だがガイアにはその言葉だけで充分理解出来た。その一瞬、彼が不気味にほくそ笑んだ事にババロアは気付けなかった。
ひと月後、再び二人が出会った時、ガイアは既にビブリオンの国王だった。完全に父と兄の信頼を得たガイアが彼らを暗殺するのは赤子の手を捻るも同様だった。その信頼にお墨付きを与えてしまったのは他でもないババロアだったのだ…。

(だがビブリオン国王として考えてみれば、ガイアが王になって結果的には良かったのかも知れないな…。レランが王では大陸統一までは出来なかっただろう)
謁見の間の真新しい椅子に腰かけてババロアはそんな事を思う。歴代皇帝の玉座はガイアが本国に持って行ってしまったのだ。
この巨大な謁見の間も所々壊されて装飾が剥がされ、随分みすぼらしくなってしまった。
「オルストリア領主アクシミリアン公爵閣下にあらせられます!」
部下が高らかに宣言し、扉が開かれ、二人の人物が謁見の間に入って来た。
一人は装飾ゴテゴテのド派手な鎧に金糸で刺繍されたシルクの軍衣をまとった丸い中年。もう一人は軍装は質素だが精悍な青年。アクシミリアンとアルスだ。
ババロアは思った。
(アクシミリアン、相変わらず丸いな…。しかし従えている男は何だ?華美な軍装で有名なオルストリア州軍にしては地味な装いだな。というか、どこかで見たような気がするんだが…)
だが、ディアナ皇女をかっさらって軍門に降って来た傭兵男とは結び付けられなかった。
「ババロア大公殿下におかれましてはご機嫌麗しく、恐悦至極に存じまする。マロ達オルストリア州軍が来たからには、必ずやビブリオン帝国に仇なす逆賊を成敗してご覧に入れるでおじゃりまする」
「うむ。心強い限りだ、アクシミリアン公爵。今日の所はまず、ゆっくり休んで長旅の疲れを癒やしてくれ。貴殿には期待しているぞ」
「ははぁっ!!」
二人は片膝を付いて頭を下げた。

「フン…若僧めが!何が『貴殿には期待しているぞ』じゃ。大した能力も無いクセにガイアの親戚というだけで威張りくさりおって…」
宮殿を一歩出た途端、アクシミリアンはババロアに悪態ついた。
「お前だって無能のクセに領主やってるじゃねえか」
「何か言うたでおじゃるか?」
「いや、何でもねえよ」

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