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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 1

千年に渡ってアルシア大陸全土を支配していた神聖ノーマ帝国が滅亡して、もうそろそろ百年になろうというのに、戦乱は未だに収まっていなかった。
諸王は『我こそ全土を統べる王』と称し、覇権を争っていた。いくつもの国が興り、また滅びていった。
だが、そんな歴史の動乱も庶民にしてみれば迷惑千万だった。働き盛りの男は兵隊に取られ、残った女子供は重税に苦しむ。敵でも攻めて来れば財産は奪われ、家は焼かれ、女は犯された。何一つ良い事無し。
そうして街や村を失った人々は、ある者は別の地方に移り住み、またある者は旅芸人や行商人などの流浪の民となった。
この男も幼い頃、あるいは親の代に、そうやって故郷を失った一人なのだろう。
だろう…というのは彼自身、自分の出自について良く分かっていないからだ。
彼の名はアルスと言った。ある地方の言葉で『大地の子』という意味らしいが、誰が名付けたのかは分からない。彼は孤児だった。
物心ついた頃にはもう親は無く、ある大きな城下町で同じ孤児の仲間達と暮らしていた。
成長し、傭兵として身を立てようと決めたアルスは、戦いを求めて諸国を旅した。何しろ戦乱の時代だ。常にどこかの国で兵を募集している。
そうしていくつもの戦いに参加する内に、そこそこ実力もついてきた。
そんな折、天下分け目の決戦が近々ありそうだとの噂を聞いた。
大陸最大の二大国の間に緊張が高まっている。
一方は滅亡した神聖ノーマ帝国の正統王朝とされるノーマ皇国。本当に正統性があるかどうかなんて知った事ではない。
もう一方はビブリオン王国。ここ十数年で急速に領土を広げ、のし上がってきた新興国だ。
この二国の戦いは、間違いなく大陸の命運を決するであろうと言われていた。
ノーマもビブリオンも大々的に兵を募集し、更に各国や民間の勢力に応援を求めた。
諸国の王から自治都市の市長、傭兵団の首領や盗賊団の親分までもが悩みに悩んだ。ひょっとしたら、今回の戦いで戦乱の時代が終わるかも知れない。…という事はどっちに着くかで、平和になってからの処遇は大きく変わる。簡単には決められない。
アルスのように個人で傭兵稼業をしている連中にとっても同様だった。国や街の命運ほどではないが、後で貰える恩賞の事など考えると慎重にならざるを得ない。
「それに上手く手柄を立てりゃあ、田舎の領主にでもして貰えるかもしれねぇぞ。なぁ、お前もそう思うだろ、アイシャ?」
「はぁ…はぁ…はい…ご主人様ぁ…」

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