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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 86

それから7年が過ぎた。その間にもビブリオン王国は順調に領土を広げ、国力を増強していった。
幽閉されたガイアは日々、本を読んで過ごしていた。他にする事も無い。彼は政治、軍事、外交、科学、建築、農業、天文、歴史などなど…様々な分野に渡る書物を読み漁り、幅広い知識を身に付けた。
グラン王も老境に差し掛かり、そろそろ次代の事を考えねばならなくなってきた。
ある時、彼は当時まだ公子だったババロアを呼び、一つの提案をした。
「君を呼んだのは他でもない。ガイアの事だ」
「ガイア王子の…?」
ババロアはグラン王がなぜ今更その名を口にしたのか分からなかった。
「レランは温厚で真面目だが、この戦乱の世の統治者としてはいささか不適格に思える。その点ガイアは多少冷酷な所もあるが昔から利発な子だった。だからガイアには補佐役として兄レランを助けてもらいたいと思っている…」
「それはどうでしょう…ガイア王子の事です。そんな事をしたら、レラン王子を殺して自ら王位につく…などという事も考えられるのでは?」
「いや、最近のガイアを見るに、書物を好み、話をしてみても、もう昔の残酷さは見られないように思える。きっと7年間の幽閉の間に更正したのかも知れん」
名君グラン王と言えど所詮は人の親だな…とババロアは内心ため息をついた。
「失礼ですが、それは“身内の贔屓目”というやつでは…?」
「そうかも知れん。そこで君を呼んだのだよ。ガイアに会って、本当に改心したのかどうかを判断してもらいたいのだ。これには家族でもなく赤の他人でもない君が適任だと思ってな…」
「分かりました。そういう事ならばお引き受けしましょう!」
ババロアはさっそくガイアの幽閉されている塔に向かった。
「やあ、ババロア殿!お久しぶりです。突然いかがなさいました?」
「い…いえ、たまたま用事で立ち寄ったついでに、殿下のお顔を拝見したいと思いまして…」
ババロアは驚いた。ガイアは見目麗しい美青年に成長していた。長期に渡る幽閉のため、肌は白く、体つきも華奢で、黙っていれば女性にしか見えない。
(信じられん…これがあのガイアなのか…?)
ババロアはガイアの美貌に一瞬見惚れるが、気を取り直して尋ねた。
「聞く所によりますと殿下は読書を好み、大変な知識を身に付けられたとか…」
「それ程の物ではありません。ただ、新たな知識を得る度に昔の自分の不明さを思い知らされます。あの頃の私は全く幼く愚かでした。もしあの頃の私に、あと少しの分別と良識があれば…それを思うと、一日だって後悔しない日はありません」
ガイアは本当に変わった…少なくともその時点ではババロアは本当にそう感じた。しばらく話してみたが、ガイアの知識は相当なもので、しかも礼儀正しく、教養も備わっている。

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