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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 75

サフィアはゆっくりと、もう動かぬアイシャに歩みより、二人の子をよけて胸に耳を当て、次に閉じた目をこじ開けて覗き込み、最後に口元に耳を近づけ、そして言った。
「寝てるだけですね」
「…へ?」
「な…!?」
「……」
「何や!?死んだんちゃうん?」
サフィアはにっこり笑って言った。
「はい。普通に生きてます」
よく耳を澄まして見てみると、スゥスゥと寝息を立てており、それに合わせて腹も上下している。
「まぎらわしい真似しやがってコノヤロ!」
アルスはペチッと軽くアイシャの乳をはたいた。その目には光る物があった。
「う〜ん…ママのオッパイにおイタしちゃダメぇ〜…ムニャムニャ…」
「寝言いってやがる…」
「フフ…多目に見てやりなよ、アルス」
「お疲れ様でした、お姉様!」
「一件落着です〜」
「いや〜、何にしても良かったなぁ!今夜は酒盛りや!」
皆は一様に安堵の表情を浮かべたのであった。

後日、二人はウルスとウルサと命名された。アイシャが産褥(産後の諸症状)で熱に浮かされて“白い狼が自分の股から飛び出して来る夢を見た”と言ったので、アルスが名付けたのだ。
「ご主人様、もうちょっと考えた方が…」
「いや、名前ってのはフィーリング第一なんだよ!もしかしたらコイツら、狼の神の化身か何かかも知れねえぜ!」
「私、男の子だったらアンドレアで、女の子だったらマリアンヌって決めて…」
「却下!」
「そんなぁ〜…」

それから1ヶ月ほどは何事も無く過ぎた。
アイシャは慣れない子育てに戸惑いながらも、ウルスとウルサの母親として頑張った。
サフィアは州の再建のために様々な問題に取り組み、エルザも良く補佐した。
その下でライラは南蛮との連絡係、またカルラは領内の治安担当となって奔走した。
城下では、アルスが領主になってから、賊の襲撃や犯罪が減り、生活の目途も立ったと好評だった。

そんなある日、隣州オルストリアから使者が訪れた。
オルストリアには先代が残した莫大な借金がある。使者は下へも置かず丁重にもてなされ、早速アルスとサフィアが謁見した。
「アルス閣下におかれましてはご機嫌麗しく…」
「あぁ、ウチではそういう貴族貴族した挨拶は無しにしてんだ。堅っ苦しいから」
「すみません〜、“何事もカジュアルに”がウチの領風でして…」
「ほほほほほ…いや、結構。いかにも傭兵上がりのアルス閣下らしいお考えですな」
「いやあ〜、そう言ってもらえると嬉しいねぇ…ヘヘヘ」

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