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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 59

三人は村に戻り、ドンにこの事を話した。
「ホンマか!あの沼、金になるんか!?」
「ああ、そこで相談なんだが…」
アルスはドンの目をジッと見て言った。
「あの沼の権利をお前ら南蛮人に譲ろうと思う」
「え…!?」
「それは…」
「ええんか?」
「アルスさん…」
ドン、エイラ、ライラは一瞬耳を疑った。サフィアだけは予想済みだったようで「やっぱり」という顔をしている。驚く一同にアルスは言った。
「その代わり条件がある。今後一切盗賊行為を止めてもらいてえ」
「た…確かにその毒水がありゃ、ワイらもう盗賊せんでも食っていける…せやけど水が無うなったらどうすりゃええんや?いつかは無うなるやろ」
「ぱっと見た感じですが、だいたい10年分くらいです」
サフィアが補足する。アルスは言った。
「その金で平野に戻るんだ。家を建てて、牧場や畑を作って…お前らの爺さん婆さんの時代までやってたようにな。10年もありゃあ出来るだろ?」
「…なるほど、そういう考えか。しかし、せっかく見つけた金の成る木ならぬ沼を簡単に譲ってしもうてええんか?」
「構わねえよ。そもそもビブリオンが先にお前らの暮らしを奪ったんだ。これで貸し借り無しって事にしようぜ」
「アルス…」
その言葉を聞いたライラは思わず目が潤んだ。ドンは言う。
「お前みたいな北方人に会ったん、ワイ初めてや。お前は他の奴らとは違てエエ奴みたいやな…」
しかしドンは渋い表情で言った。
「うーん…しかしこりゃあ難しい話やでえ…必ず上手くいくという保証も無いしなあ…」
「何言うとるん、あんた!ええ話やないの」
渋るドンをエイラが一喝した。
「あんた、常日頃から言うてたやない。最近じゃあ盗賊稼業も分が悪うなって来て、そろそろ考えを改めなあかん…て。男やったら腹くくりや!」
「せやな…せや!決めたで。その話、乗った!どうせこのままじゃあ先見えてるしな。ええ機会や!ハハハ…!!」
エイラはアルスとサフィアの方を見てニコッと笑った。この村の実質的な指導者は彼女なのでは…と二人は思った。

その晩、ドンはアルスとサフィアのために歓迎の宴を開いた。客人たる二人は最上席、つまりドンの隣に座った。その両側には村の長老達、次に若い男達がずらりと並び、末席に女子供が座る。これが彼らの序列らしい。
「我が友アルスよ!どんどん飲めや!」
ドンは機嫌が良いようだった。彼は獣の皮の服を着て、角や牙で作った首飾りを何本もジャラジャラと下げ、手には人間の頭蓋骨が乗った杖を持っている。他の村人達も彼ほどではないが様々な装飾品を身に付けていた。これが宴席での彼らの盛装なのだ。

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