PiPi's World 投稿小説

アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 58
 60
の最後へ

アルス正伝 60

やがて太鼓の音が鳴り響き、中央に焚かれた炎の周りで踊りが始まった。
裸の男女が輪になってオーオーと雄叫びを上げながら火の周りを踊り回っている。
「ありゃ、何か意味があるのか?」
アルスはドンに尋ねた。
「遠い昔の事を表現した踊りや。分かるか?」
「昔のヤツらも火の周りで踊ってたのか?」
「アホウ!そのまんまやないか。全然ちゃうわ。ええか…」
ドンは語り始めた。

…遠い昔、人は神々と同じ特別な能力を持っていた。自由に空を飛び回り、世界のどこへでも行けた。遠く離れた場所の事や過去に起きた事を見る事が出来た。姿も見えず声も届かぬほど遠い所にいる相手とも簡単に会話が出来た。その頃の世界には餓えも病気も無かった。人々は宮殿のような美しい家に住み、天まで届く巨大な塔が何本も建ち並ぶ壮麗なる都市が各所に築かれていた。正に楽園であった。
ところが時が経つにつれて人々は次第に奢り高ぶり、神々への尊敬の念を忘れて傍若無人な振る舞いをするようになった。
悦楽を求めて獣を殺し、木々を焼き、山を削った。汚物を撒き散らし、水と風を腐らせた。
神々は怒り、地上を炎で焼き払ってしまった。火は十年に渡って燃え続け、その間人々はただ成す術も無く逃げ惑うだけだった。壮麗な都市は跡形も無く消え去った。
人々は神々に許しを請い、神の力を手放す事を条件に許しを得た。そうして生き残った僅かな人々は己の力のみで世界を再建し、今の世界があるのだ…。

「…という話や。どうや?壮大な話やろ?」
「その話、聞いた事あるぜ。ちょっと違うけどよ」
「何!ホンマか!?」
「ある国で聞いたんだ。昔々、人間は神の力を持っていたが、悪事を働いたため炎で焼き殺され、純真な二人の男女だけが生き残った。二人は神の力を神々に返上して新たな世界を作った…お終い」
「パクリやないかい!しかも劣化コピーや!言うとくがワイら正真正銘のオリジナルやで!?その国の者を連れて来い!シバいたるわ!!」
「でも、この手の話は各地にあるぜ。国によって細部は違うけどよ。サフィア、お前も聞いた事あるだろ?」
「あ?…ええ…神話が似通うのは…まあ、そういう事もあるんじゃないですか…?」
「サフィア…?」
サフィアは口をポカンと開けて、目の前の踊りにじぃっと見入っていた。いつの間にか踊りは白熱化し、若い男女が激しく妖しく絡み合う魅惑的な舞いとなっていた。
「ちなみに今、世界を再建する場面…つまりオ○コを表現した踊りや。姉ちゃん、分かるか?」
ドンが解説したが、サフィアはもう心ここに在らずといった様子で踊りに見とれていた。
炎の周りで汗を飛ばしながら何かに憑かれたように踊り狂う男女の姿は、まるでこの世の光景とは思えず、幻想の世界に迷い込んだような錯覚を彼女に与えたのかも知れない。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す