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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 34

「やあやあ、ど〜もど〜も!」
やがてディアナを小脇に抱えたアルスが幕僚達の間をぬって現れた。
「え〜と、ビブリオンの王様ってのはどいつだ…姉ちゃん、知らねえか?」
アルスはあろう事かガイア王に向かって、そう尋ねたのであった。
「姉ちゃんと呼ばれたのは初めてだよ…」
「うぉっ!男!?」
声でガイアが男と気付き驚くアルス。レオナはアルスを斬り殺そうとしたが、ガイアは黙って彼女の前に手を差し出した。“止めろ”という合図だ。
「私がビブリオン王ガイアだ」
「なぁ〜んだ!だったらそう言えよ。ほら、ディアナ姫様を連れて来てやったぜ!」
アルスはガイアの前にドサッとディアナを横たえた。ガイアはディアナの顔を覗き込んで本人である事を確かめると満面の笑みで言った。
「確かに本物だね。素晴らしい。君の名は?」
「アルス」
「アルス?どこかで聞いた名だが…まあ良い。君の望みを言いたまえ」
「領地だ。出来れば城付きが良い」
「城付きの領地か…どこが良いかなぁ…そうだ!ジェロルスタン伯爵家の領地と居城を進呈しよう」
「陛下!それでは私は一体どうすれば…!?」
立派な髭を生やした中年の騎士が焦ってガイアの前に飛び出して来た。おそらく彼がジェロルスタン伯爵なのだろう。
パチン…とレオナが短刀を鞘に収める音がし、ジェロルスタン伯爵の首がゴロゴロと地面を転がった。目にも止まらぬ早技である。
「…という訳でアルス君、君を新たなジェロルスタン伯爵に封じる。これからは私の忠実なる臣下として頑張ってくれたまえ」
「あ…ああ、感謝するぜ」
ジェロルスタン伯爵の死体を見ながら、さすがのアルスも戸惑いを隠せない。
(この国王、マジでアブねえな…残酷とかそんな問題じゃねえ、もっと根本的な人間としての感情が欠落してやがる)
幾多の戦場を潜り抜けて来たアルスも思わず背筋が冷える。だが最も恐ろしいのは、この男の非人間的な部分ではなく、そういう人物が権力の座に着いてしまったという事であろう。
「う〜ん…ここは?」
そんなやり取りをしているとディアナが目覚めた。
「お初にお目にかかります、ディアナ姫様。ようこそビブリオン陣営へ」
ガイアはディアナに向かって恭しく一礼した。
「ビ…ビブリオン!?あ…ああ…」
ディアナは周囲を見回して自分の置かれた立場を認識し、わなわなと震え出す。
「わ…私は捕虜にはなりません!生きて虜囚の辱めを受けるぐらいなら、誇りある死を選びます!こ…ここ…殺しなさい!!」
だが口ではそう言ったものの、顔からは血の気がうせ、全身をガタガタと震えさせている。

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