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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 32

もはやノーマの敗北は確実であった。
しかしこの後、たった一人の男の為に事態は更に急展開を向かえるとは、この戦いに参加した全ての人の誰も予想していなかった。その張本人…アルスを除いてである。

「元帥の死を無駄にしてはなりません。殿下、今の内に安全な所へ…」
「え…えぇ!」
幕僚のナンバー2でありグランディス元帥が戦死(?)した今、事実上のトップであるガイアール中将がディアナに進言した正にその時であった。
「どっけどけぇ〜ぃっ!!!」
凄まじい勢いでこちらに向かって駆けて来る騎士が一騎いた。
それは良く見ると騎士ではなく馬に乗った傭兵であり、更に良く見るとアルスであった。
「な…何だ、あやつは!?」
「あっ…アルス殿!来てくれたのですね!?心配ありません中将、彼こそ我が軍の要、傭兵『無双のア…」
と、そこでディアナの言葉は途切れた。一迅の疾風の如く駆けつけたアルスは、あろう事かディアナの甲冑のベルトを引っ付かんで馬上から奪取し、脱兎の如く走り去ったのであった。
「へ……?」
将軍達は何が起きたのか分からず、ただ茫然とディアナを抱えて走り去るアルスの背を眺めていた。
彼らが目の前で起きた出来事を理解するには、たっぷり10秒はかかった。
「ディ…ディアナ様を取り戻せええぇぇー――っ!!!!」
「「「うああぁぁ〜っ!!!!」」」
最初に気付いたガイアール中将の掛け声で我に返った近衛騎士達はアルスを追ってドドドドド…と一斉に丘を駆け下りた。彼らは丘の中腹に転がっていたグランディス元帥の死体もメチャクチャに踏み潰してアルスを追ったが、彼は既に遥か彼方にあった。

「は…離しなさい!私をどこへ連れて行こうと言うの!?」
アルスの脇に抱えられたディアナは手足をバタつかせて暴れた。
「バカヤロウ!ジタバタすんじゃねえ!落っことすぞ!」
「あ…あなた、一体どういうつもりなの!?」
「そりゃあよ、ノーマはもう勝てねえから姫様を手土産にあっちに寝返るのさ」
「な…っ!!?」
ディアナは驚いて二の句がつげなかった。
「あ…あなたはそれでも誇り高きノーマ皇国軍の…っ!!」
と言いかけてディアナは黙った。そういえばアルスは傭兵だった。
「イヤアァーッ!!!!離してえぇ〜っ!!捕虜になるぐらいなら馬から落ちて死ぬわあぁ〜っ!!!」
ディアナは半ば狂ったように泣き叫びながら、まな板の上の魚の最期の大抵抗の如く暴れた。
「ちょっと黙ってろ!」
アルスは刀の柄でディアナの頭をゴツンと一発殴る。ディアナはあっさり気絶した。
「弱えな…本当にお飾り将軍だったんだな」
ふと前方に目をやると、ビブリオンの大軍が目前に迫っている。
「そらぁっ!!」
アルスは馬の腹に思いっきり蹴りを入れた。
「ヒヒィ〜〜ンッ!!!」
敵兵の刃が届こうかという直前で、馬は高く舞い上がり、兵士達の列を飛び越して着地した。驚く兵士達を後目にアルスは更に馬を駆る。

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