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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 31

そう、いくらアルス一人が強かった所で全体の戦況はどうにも出来ない。ノーマ軍はゆっくりとビブリオン軍に包囲されつつあった。
ふと丘の上に目をやると騎士の一群がたむろしている。アルスは近くにいたノーマ正規軍の騎士を捕まえて言った。
「あの丘の上で見てるヤツらは何だ!?降りて来て戦えと伝えろ!!」
「馬鹿者!あれはディアナ皇女殿下と殿下をお守りする近衛騎士団だぞ!!殿下をみすみす危険に…」
…と、そこまで言った所でその騎士は流れ矢に当たって死んだ。見ると弓矢を手にした敵の大部隊が迫って来ている。
「ここまでか…」
そう呟くとアルスはディアナ達の居る丘に向かって馬を飛ばした。

一方、丘の上から全体の戦況を見渡していたディアナと参謀達も流石に焦っていた。
「殿下!我々は包囲されつつあります。いったん戦線を離脱しましょう。その後、改めて態勢を立て直して反撃を…」
「何を言うのです!?あなたはそれでも誇り高きノーマ貴族ですか!?我が軍はまだ戦えます!ノーマ軍に“退却”の2文字はありません!」
「では“戦略的後退”という事で…」
「言い方の問題ではありません!」
「殿下!正面に敵の大軍が迫っております!!」
見ると地平を埋め尽くす兵士の山が、こちらに向かって前進して来ている。ディアナの顔からサーッと血の気が引いた。
将軍の一人が言う。
「第1騎士連隊と第3騎士連隊を正面に展開させろ!殿下が逃げ…もとい退却…じゃなくて後退する時間を稼ぐのだ!!」
「無理です!」
参謀が言った。
「第1連隊は右翼の敵を抑えるのに手一杯です!第3連隊は左翼に出ています!」
「何と…では第2連隊は?」
「しっかりしてください!第2連隊は昨日全滅したじゃないですか!?」
「もはや万策尽きたか…」
それまで黙って事の成り行きを見守っていた副司令官のグランディス元帥が静かに口を開いた。歴戦の老将である彼はこの戦いを最後に退役する予定であった。
「こうなったからには戦って華々しい最期を遂げよう。殿下、お許しを…」
「あ…え…?な…何と仰いました、元帥?」
それを聞いてようやく我に帰るディアナ。
「…聞いてなかったか、まあ良い。ディアナ皇女殿下万歳!」
そう言うとグランディスは剣を抜き、ただ一騎で敵の大軍に向かって突撃していった。
ところがあまりに急に丘を駆け下りたため、馬が転がっていた死体にけつまづいた。転倒はしなかったが、老齢の元帥はその弾みで馬から放り出され、思いっきり地面に叩きつけられたきりピクリとも動かなくなった。
丘の上の全員に気まずい空気が流れた。
「あぁ…犬死にだぁ」
誰かが思わず本音を漏らした。

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