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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 14

「アワワワワ…!!ど…どうしましょう、ご主人様ぁ〜」
アイシャは顔を真っ青にしてガタガタ震え出した。当然だ。英雄のフリをして宮殿まで行って、もしバレたら命は無い。だが当のアルスは少しも動じない。
「良いだろう。噂に名高い戦女神様にお会い出来るなんて、嬉しいじゃねぇか。案内頼むぜ」
二人は側に停められていた馬車に乗り込み、宮殿へ向かった。
宮殿へ向かう馬車の中、アルスは考えていた。皇女への謁見は自分に取って大きな飛躍に繋がるに違いない。
自分が英雄として大成し、富と権力を得るきっかけに…。
彼は表面的には冷静さを装っていたが、内心はかなり興奮していた。
だが、失敗すれば全てを失う危険な賭けでもある。
だが元々孤児だった身の上の彼には失う物など何も無い。恐怖は無かった。
(上手くすれば、ちゃちな田舎領主なんかじゃなく、一国一城の主だって夢じゃねえかもな。ふふふ、そうなったら国中の美女を集めてハーレムを作ってやるぜ)
思わず笑みが漏れそうになる。
一方、アイシャは生きた心地ではなかった。
(あああぁ!!神様ぁ…どうかご主人様が偽物だってバレませんように〜!!)
そんな二人の様子を見てクロイツァーは思う。
(この女奴隷、物凄い緊張ぶりだな。まぁ、それが普通の反応なんだろう。それに比べてこの男は眉一つ動かさない。さすが『無双』と呼ばれるだけの事はある勇者だ…)
馬車は宮殿に到着した。二人はクロイツァーに付いて宮殿の敷地内を歩いて行った。さすが、かつてアルシア大陸全土を支配した帝国の宮殿だけはある。千年間、歴代皇帝によって増築され続け、一番巨大な中央の本殿を始め、その左右には東宮殿と西宮殿、皇妃の宮殿、皇太子の宮殿、後宮、各役所、使用人の宿舎、兵舎、食料倉庫、武器倉庫などなど無数の建物から成り、しかもその一つ一つがとんでもなくデカい。遥か後の世の物で例えれるならマンモス大学のキャンパスなどを想像してもらえれば良いだろう。案内がなければ確実に迷ってしまう。
クロイツァーは本殿の前を通り過ぎ、さらにその奥へ進む。
「何だ、あのデッカい所で会うんじゃねえのか?」
「いくら貴殿が名高い英雄とはいえ、称号も無い一介の傭兵だ。正式な謁見は出来ぬ」
「そうかよ…」
そもそも偽物なので文句も言えないのだが…。
やがて庭園のような所に着いた。庭と言ってもちょっとした森ぐらいある。
「ここだ。皇女殿下は毎日この時間、ご公務の合間にこの庭園を散策なさる。殿下がお見えになられたら、良いか、御前に出てご挨拶申し上げるのだ」
「何だか農民が領主様に直訴するみてえだな」

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