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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 110

(アクシミリアン…ありがとよ)
後方から聞こえていた破裂音が止んだ事で、アルスはアクシミリアンの死を悟った。だが、おかげで追撃して来る敵軍と充分な距離を取る事が出来た。
「…見えた!川だ!!」
アルス達の眼前に大きな川が現れた。この川の上流にドンの部下達が堤防を築き、水をせき止めてくれているはずだ。
ところが…
「ど…どういう事だよ…?」
川の水は少しも減っていない。いや、むしろ通常より明らかに多い。まるで溜めていた水を一気に流したかのような…。
「そうか…先に逃げたヤツらだ!」
どう考えても彼らの仕業に間違い無かった。未知の新兵器を持った敵の追撃を振り切るために、当初の計画を無視して堤防を切ってしまったのだ。アルスや仲間達を見捨てて…。
「バッキャローッ!!!!早まった真似しやがって…っ!!!!」
「アルスはん…」
南蛮兵達の中の年長の男がアルスに言った。
「馬鹿共が先走った事してもうて済んまへん。せやけどヤツらも悪気があってした訳やないんや…」
「ああ…訳の分からねえ敵への恐怖心…そいつらから逃げたい一心でした事だ…分かってるさ」
ここで彼らへの恨み事を言っても始まらない。アルスは腰の刀を抜き、高くかざして行った。
「…どうやら俺らも覚悟を決める時みてえだな!先に逝ったヤツらの仇討ちだ!!派手に暴れてやろうぜ!!!」
「「「オォーッ!!!!」」」
そしてアルスと南蛮兵達は馬を返して迫り来る敵に向かって突撃していった。

「ガ…ガイアール中将閣下!!!敵騎兵数十騎ほど、川の手前まで行きましたが反転し、こちらに向かって突っ込んで来ます!!」
「何がしたいのかイマイチ良く解らんが、まともに相手してやる必要は無い。銃兵隊、撃ち方用意…むっ!?」
その瞬間、ガイアールは言葉を失った。
「ど…どうなさいました、閣下?」
彼は目をまん丸に見開いて、こちらに向かって突撃して来る敵の一団を見つめていた。
先頭をきって突っ込んで来る一人の男。
特徴的な曲刀。
その顔。
忘れようはずも無い。
何度この手で殺してやりたいと思った事か。
ガイアの次に憎い男。
目の前で皇女を浚って逃げた男。
「アルスウゥー――――ッ!!!!!」
彼はもう脇目も振らず剣を抜いてアルスに向かって一直線に突撃していった。
「あ…閣下ぁ!?」
もう部下の声も聞こえない。立場も戦況も関係ない。ずっと殺したくて殺したくてしょうがないと思っていた男が目の前に現れた。それだけで充分だった。
「…ガイアールッ!!?」
一方アルスも隊列を飛び出してただ一騎、自分に向かって来る騎士の正体に気付いた。
((相手にとって不足は無い!!))
両者の距離は次第に縮まる。
「ウオオオオオォ――――――ッ!!!!!!」
「ハアアアアアァ――――――ッ!!!!!!」

ガキイィィィインッ!!

勝負は一瞬だった。

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