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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 109

「む!あれは…」
正面に視線を戻したガイアールは、敵が逃げ去った後に一人残った大男の姿を見つけた。
将官と思しき立派な甲冑に鋼鉄の棍棒…そして何よりもその巨躯に彼は見覚えがあった。
「ア…アクシミリアン公爵!?」
「そんな馬鹿な…!!」
「何故オルストリアの領主がたった一人で…!?」
「何でも良い!討ち取って名を上げろぉーっ!!」
勢いづく部下達。ガイアールはふとアクシミリアンの傍らに目をやる。壊れた馬車…確かアクシミリアンは馬に乗れないと聞いた事がある。それでガイアールは納得がいった。
「あの男は死ぬ気だ…皆、気を付けろ!」
彼はアクシミリアンがかつて“クラッシャー”と呼ばれた豪傑である事も知っていた。
だが血気盛んな若い騎士達は我先にと剣や槍を振りかざし、アクシミリアン目掛けて襲いかかって行く。
「フン…ッ!!!!」
その刃が届く寸前、アクシミリアンは手にしていた巨大な棍棒を横に払った。
「「「ギャアァー――ッ!!?」」」
その一振りで5〜6騎の騎士達が弾き飛ばされ、地面に叩きつけられて死んだ。
「何という事…先程の女戦士と言い、オルストリア軍は化け物揃いか!?」
常人の力では目の前の男を討ち取る事は不可能だと判断したガイアールは兵達に命令した。
「撃ち殺せ!」
兵士達は新兵器をアクシミリアンに向けて放つ。
パパパパパパァーンッ!!!!
「ぐぅ…っ!?」
全身に衝撃を受けたように感じた次の瞬間、アクシミリアンは胴体と四肢に無数の傷を負っていた。傷は小さいが深く、その数は10ヶ所以上。
「おのれ…魔術の類か…!?」
アクシミリアンは全身から噴水のように血を噴き出しながら言った。
「…やったか!?」
「いや、まだ立っているぞ!!」
「何て強さだ…化け物め!!」
代わって槍を持った兵士達が出て来てアクシミリアンを取り囲む。
「それ!トドメを刺してやれ!!」
隊長格の男がそう言うと兵士達は一斉にアクシミリアンに襲いかかった。
「おのれぇっ!!この雑兵共めがぁーっ!!!!」
アクシミリアンは全身を襲う激痛に耐えながら棍棒を振り回して応戦する。その獅子奮迅の暴れっぷりに、彼の周りにはたちまち兵士達の屍の山が出来た。
だが敵兵は後から後から限りなくやって来る。既に体には何本もの槍が突き刺さっている。いかな豪傑と言えども所詮は人間。ついに彼は力尽き、地面に倒れ伏した。
(どうやらマロはこれまでのようじゃ…後は任せたぞ、アルスよ…)
死に瀕した彼の脳裏に浮かんで来たのは、アルス、シルビア、リンダ、そしてオルストリアに残して来た妻の姿であった。
「サフィール…」
彼は最期に最愛の女の名を口にし、息絶えた。

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