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アルス正伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アルス正伝 106


「ドン――――ッ!!!!」
アルスの叫びが辺りに響いた。
その声に驚いた馬が動いたため、ドンの体はグラリと傾き、落ちた。
「ア…アルスはん…?」
「エイラか!?」
ふと足元の方からエイラの声が聞こえた。アルスは地面に横たわっていたエイラを抱き起こした。
「エイラ…無事だったか」
「何とか…でも…ウチも…もうアカンわ…」
彼女は胸に傷を受けており、片目も潰れていた。医学知識の無いアルスにも、もう助からない事は分かった。だが彼は言った。
「何言ってやがる!諦めんじゃねえ!絶対に助かる!」
「なら…ウチを…馬に乗せてくれへんか…?」
「ああ!分かった」
エイラの馬は既に死んでいたが、辺りには主人を失った馬達がウロウロしていた。アルスはその中から一頭を引いて来てエイラを乗せた。
「おおきに…アルスはん…恩にきるで…」
「気にすんな!さあ、一刻も早くここから逃げようぜ!」
エイラは一瞬押し黙り、そして言った。
「アルスはん…残った者達を頼みます」
「な…何言ってやがる!?」
「ウチはもうダメや…時間を稼ぐさかい…味方を連れて逃げるんや」
「ふざけんな!一人だけ良い格好しようったってそうはいかねえぜ!俺も行く!」
「アルスはん…アンタはこんな所で死ぬ人間やおまへん」
エイラはアルスの方を見てニコッと笑って言った。
「ほな…後は任しましたよ!」
そして背中に担いでいた大きな戦斧を手に持ち、敵の方に向かって馬を飛ばした。
「エイラアァーッ!!!!済まねえーっ!!!!」

「凄い力だ…」
戦況を見ていたガイアール中将は呆然と呟く。
一瞬にして半数以上の敵兵を葬った新兵器の威力に彼自身、驚きを隠せなかった。
「やりましたね閣下!」
「ご覧ください!ヤツら慌てて逃げて行きます!」
「ざまぁ見ろってんだ!ハハハハハ…ッ!!」
他の指揮官達は興奮した様子で叫んでいる。
だが、ガイアール中将だけは深刻な顔をしていた。
『どうだ、ガイアール?“神の力”は?』
ふと、この場には相応しくない幼い声に呼ばれ、ガイアールは振り返る。
そこには一人の少女が立っていた。ショートヘアで白いシンプルな服を着た10歳ぐらいの美少女だった。
「神の力ですって?」
ガイアール中将は再び戦場を見、そして目を伏せて言った。
「これは悪魔の力です。こんな恐ろしい武器が世に広まったら、世界は狂気に支配されるでしょう…最初アナタに会った時、私達は本当にアナタを神だと思った。だがアナタは神などではなかった。アナタは人類を破滅に導く悪魔だったのですね…」
ガイアールは自身の手に持ったその武器を握り締めた。それは兵士達が持っている物とは違い、短くて小型だった。

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