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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 192

当然アレスにそれを断るつもりはない。
頼まれなかったら、こっちからお願いする気でいたくらいだ。

「もちろんだ。オレなんかの力でよければ、いくらでも貸してやるよ」
「感謝します」

問題なのは今仲間たちがどこにいるかわからないこと。
アレス以上にお人よしで気のいい連中だから、そのうち合流できるだろうが。
聖剣エクセリオンを片手に、アレスは戦場へと駆け出した。
地下室を出て地上階に出ると、そこでは兵士たちが武器を片手に右往左往の大騒ぎをしていた。
どうやらよほど強力なモンスターが出たらしい。
兜の緒を締め直したアレスはそのまま城を出て城下町へ。向かうはこのクイーンマリアの城壁。
あそこは高くて見晴らしがいい。敵の確認をするにはもってこいだろう。
避難する人、魔物の迎撃に向かう人。さまざまな人たちが行きかう中。
アレスは城壁に向かってひた走る。
移動の途中で人でごった返している道を歩くのはかえって手間がかかることに気づき、適当な民家に入り、そこから屋根伝いに移動する。
さすが王都と名乗るだけあって、どの民家も2階建てというブルジョワジーにちょっと嫉妬を覚えつつも、移動を続けていると。
不意に目の前の城壁からおかしなものが見えた。
城壁の向こう側から何かがちらりと顔をのぞかせたのだ。
最初アレスはそれを鳥か空を飛ぶ魔物だと思った。
魔物の侵入を阻む城壁より上に出てくるものなど、それ以外には太陽と月、そして天空の星々くらいのものだったから。
―――だが、その常識は次の瞬間、あっさりと崩れ去った。
城壁の向こう側から顔をのぞかせたのは鳥でも空飛ぶ魔物でもなかった。
出てきたのは巨大な魔物の手。子供が作った不格好な粘土細工を思わせるような1本の手が、城壁の向こう側から伸びてきていたのだ!
それを理解した時、アレスだけでなく王都の住人達までもが逃げることを忘れ、その足を止めた。
人は想像以上のものに出くわしたとき、頭が真っ白になって動けなくなる。
目の前の現実を受け入れられず、思考が停止するのだ。
そして、それを現実であると理解すると。
今まで出会ったことのない強大な『未知』を前に、言葉にできない恐怖が襲い掛かる。
王都の住人はこれ以上ないほどの悲鳴を上げ、逃げ回った。
恐怖に耐えきれず、守るべき子供を捨てて逃げる母親や老いた父親を見捨てる男もいた。
魔物との戦いに慣れている王都の兵士たちですら驚いて腰を抜かす始末。
アレスが我に返るまでその場に立ち尽くしていたのも、仕方のないことと言えるだろう。
もしティルティオラの結界がなければ、どんな大惨事になっていたか、想像もつかない。
だが敵は痛みを感じていないのか、結界をベタベタ触りながらこちらに来ようとしている。

(―――マズいッ!?早く、あのモンスターを何とかしないとっ!)

我に返ったアレスは同じく正気を取り戻した一部の兵士たちとともに戦場へ向かう。
想像したくもない、嫌な予感を引き連れながら。
同時刻。城壁の上では避難を済ませた兵士たちが、1匹の化け物を相手に戦っていた。
そう。敵はたった1匹のモンスターだった。
だがその強さ、醜悪さは昨日襲ってきた魔物の群れとは比べ物にならないほどの相手であった。

ドスゥンッ・・・!バチバチバチッ!!
ドスゥンッ・・・!バチバチバチィッ!!

「撃てっ!撃て撃て撃てーーーッ!!敵をこれ以上近づかせるなっ!!」

結界に守られた城壁に体当たりを繰り返す巨大な肉の塊。
それが王都に襲い掛かった災厄の姿であった。
巨大な肉の塊と聞いて某ゲームのキン○スライムみたいな魔物を想像したものは、かなりいいセンを行っている。

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