僕の侍女はどこにいるの? 95
ライールの使い魔であるミリィとレスカはどうだか知らないが。
今、シーリィがここにいるのは義姉であるエリーたちの発作を抑える手がかりを求めてのことだったのだ。
手がかりは得られなかったかわりに、夫兼ご主人様のリスペクトを見つけたわけだが。
「じゃ、じゃあ、こんなところでお茶している場合じゃないじゃないか!?
今すぐ地上に戻らないとっ!?」
「落ち着けよ、リス兄ぃっ!?
気持ちはわかるけど、急いで帰ったって助けられるわけじゃないだろっ!?
ここには魔物がわんさかいるんだ、ゆっくり万全の体制を整えながら戻るしかないんだよっ!!」
その指摘にリスペクトは言葉に詰まる。
確かにシーリィの言うとおりだ。
魔物のいる場所では常に万全を期すことが基本。
治す手がかりもないのに、その上自分に何かあったらどうすればいい。
とにかく地上へ戻らなければ。
自分の帰りを待つ妻たちの顔を思い出しながら、リスペクトは味気ない紅茶に口をつけるのであった。
衝撃のティータイムの後、リスペクトたちはできる限り急いで地上へと向かった。
その時のリスペクトの焦りようはシーリィが見たことがないほどだ。
自分よりはるかに冒険慣れしているはずのリスペクトが、先走って危険に身をさらしてしまうことが何度もあったくらいなのだから。
(エリー!リデア!ルチア!マリューカ!シャノン!
シア!ミリィ!レスカ!みんな、待ってて!
今すぐぼくが行くから!)
今も苦しんでいるだろう、妻たちに会いたい。
会ってその苦しみから救いたい。
その一心でリスペクトは生家へと急ぎ続けた。
ライールの家はリスペクトが魔界へ旅立つ前と変わることなくそこに建っていた。
そしてその家の庭には・・・。
「ディバーズお兄ちゃ〜ん!おしっこぉ〜!」
「うわ〜ん!!ルルクがあたちをなぐったぁ〜っ!!」
「お兄ちゃん、一緒に遊ぼ?」
「だ〜っ!?こっちは身体が1つっきゃねえんだ、いっぺんに言うなっ!?」
子供たちの声と共に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
リスペクトはシーリィたち置き去りにして門をくぐって庭に向かうと、そこには子供たちに振り回されているディバーズがそこにいた。
かつて主人のリディアとともに冒険してきたデーモン族の三叉槍使いは、保父さんルックで子供たちの相手をしていた。
リスペクトのいない間、父親代わりを勤めていた彼は、誰かが庭に入ってきたことには気づいていたが、子供の世話に忙殺されてそれどころではない。
「おい、シーリィ!やっと帰って来たのか!?
早くガキどもの世話を手伝ってくれ!
オレ1人じゃ相手しきれねえんだからよ!」
「ディバーズ・・・!?」
「・・・うん?」
予想していた人物とは違う男の声に、ディバーズはようやくリスペクトのほうに目を向けた。