僕の侍女はどこにいるの? 81
カスリ傷ならまだしも、吹っ飛ばされるような攻撃まで食らって気づかないほどリスペクトは愚かではなかった。
何より戦闘後は毒などの攻撃を受けていないか、調べて治療するのが鉄則だ。
まして魔法で治療したところで、その傷跡まで消すことはできない。
そこに考えが至って、初めてリスペクトはこの世界が現実ではないかと疑い始めた。
今は日増しに高まる嫌な予感を手がかりに、現実へ戻る手段を探っていた。
表向きは何にも気づいていないように振る舞いながら。
そしてついにリスペクトが現実へ帰る瞬間が訪れた。
バランとのファーストコンタクトの瞬間に、彼は全てを思い出したのだ。
「ようこそ、リスペクト君・・・私の奴隷が君の事を気に掛けていたものでね、呼ばせてもらったよ」
「・・・!」
目の前でバランの巨大な男根をおいしそうになめしゃぶるエリー。
バランの力で犬の獣人に変えられ、あまつさえ裸に首輪だけの屈辱的な姿をさせられているエリー。
リスペクトは自分の大切な人を『また』辱められたという怒りで、全てを思い出したのだった。
「おや?、テオドラ・・・人間相手に不覚を取るなんて、君も間抜けだねぇ・・・」
『あの時』と同じようにバランがテオドラを嘲笑する。
その瞬間、リスペクトの頭の中で何かが切れた。
「・・・黙れ」
「ん?何か言ったかね、リスペクト君?」
「これ以上・・・みんなを侮辱するなッ!!」
ゴウッ!
次の瞬間、リスペクトからものすごい量の魔力が放出され、突風を巻き起こした。
この時、リスペクトはテオドラの手によって両性具有の身体となっていたが、あまりの魔力に仕込まれた魔法術式を破壊し、男の姿に戻っていく。
「り・・・リス様!?」
「な、何だとっ!?た、たかが人間になぜこれほどの魔力が・・・ッ!?」
突然の出来事にテオドラは戸惑い、バランは大きく動揺した。
正気を失っているエリーは事態を飲み込めないのか、きょとんとした顔でこちらを見ている。
「もうこれ以上、おまえの好きにはさせない!
あの時つけられなかった決着をつけてやる!!」
風が止んだとき、リスペクトの右手には具現化された光の剣が握りしめられていた。
「こ、こしゃくなッ!!人間風情がデヴィル族の王バランに勝てると思うなッ!?」
その言葉に激昂したバランも腰に差した黒い剣を抜く。
こうしてリスペクトの、バランとの因縁を断ち切る戦いの火蓋が切って落とされたのだった。