僕の侍女はどこにいるの? 80
今、リスペクトが追体験しているのは、ルチアたちを助けたあたり。
この時リスペクトは前々から感じる違和感に悩んでいた。
まるでこれから起こることを知っているような奇妙な違和感。
そして何か重大なことを忘れているような喪失感が、いつも彼の心に引っかかっていた。
最初のうちは気のせいかと思ったが、次々起こるデジャヴにそうではないことを薄々ながら感じ始めていた。
特に時間が経つごとに感じる、何とも言えない悪寒がリスペクトを恐れさせていた。
(この感覚は何なんだろう?何か大切なことを忘れているような・・・。
忘れちゃいけないことのはずなのに、思い出したくないような・・・?)
リスペクトは日ごとに強くなっていく違和感に、正しくはバランの呪いを解くための試練の存在を無意識ながらに自覚していたのであった。
「リスペクトさま?どうしました?」
「・・・・・・・・・・・・」
使い魔マリューカの問いに、リスペクトは答えない。
今、彼が追体験しているのはバランにさらわれたエリーを探しているあたり。
この時、リスペクトははっきりと感じられる違和感の正体に気づいていた。
「・・・ねえ、マリューカ。ぼくって今まで何度も戦ってきてよね?」
「は・・・はあ」
最近、様子のおかしい主の問いに、マリューカは動揺しつつも答える。
一方のリスペクトは、傷1つない右手の甲を見ながら質問を続ける。
「そう。確かに僕は今まで強いモンスターたちと戦ってきた。
戦ってきた相手はどれも強敵で、無傷で勝てたことはなかった」
「・・・?そ、それがどうかしたんですか?」
「その割には僕の身体ってキレイだよね?」
「・・・それは薬草や魔法で傷を治したからでは?」
「だと、いいんだけど」
「・・・?」
それきりリスペクトは黙り込んでしまった。
主の真意を読めないマリューカはただただ首を傾げるしかない。
このとき、リスペクトは考えていた。
今いるこの世界は現実ではないのかもしれないと。
試験が始まってから薄々感じていたが、確信したのはつい最近のことだ。
ケガをしても痛みを感じず、傷もいつの間にかふさがっている。
最初は興奮して痛みを感じなかったとか、誰かが知らない間に魔法で直してくれたとか、いろいろ思っていた。
でも、違う。