僕の侍女はどこにいるの? 107
「あンっ、リス様ぁ・・・」
「ひどいわ、エリー。リス様との再会に水を差すなんて・・・!」
「何言ってるのよ、2人とも!?
リスが苦しがってたの、見えなかったの!?」
口惜しそうに抗議する2人に、エリーが激昂する。
ぼくのことを助けてくれたのはうれしいんだけど・・・。
え、エリー?君もしっかりそのおっきい胸の谷間に、ぼくを押し付けてるって気づいてる・・・!?
呼吸困難を訴えるタップを必死に送って、ばくは何とか事なきを得た。
うう、危なかった。3人の胸はもはや凶器の域に達している。
これからは気をつけよう。
「ご、ごめんね、リス!?私ったら・・・!」
「あ、うん。わかってくれたらそれでいいよ。
それより・・・ただいま。リディア。ルチア・・・」
「お帰りなさいませ、リス様」
「リス様がお戻りになるこの日を、ずっと・・・お待ちしておりました」
2人と再会できたのはうれしいんだけど・・・。
やっぱり何か変だ。丁寧な言葉遣いと言い、一体どうしたんだろう?
ぼくが2人の異変に首をひねっていると、リディアたちが不安そうに声をかける。
「あの・・・リス様?いかがなさいましたか?」
「いや、その・・・旅に出る前とずいぶん雰囲気が違うからさ。
その、驚いちゃって」
ぼくは遠回しに2人の異変を指摘する。
しかし自覚がないのか、2人は首を傾げるばかり。
「そう・・・ですか?あまり変わった気はしないんですけど」
「リス様と別れてから3年も経っていますからね。そのせいかも」
2人はそう言うけど、これは時間の経過で片付けられる問題でないような気がする。
昔のリディアはもっと元気いっぱいで活動的な感じだったのに、今では落ち着いてどこかの貴婦人みたいな雰囲気をまとっている。
ルチアのおっとりオーラは健在だけど、全てを包み込むような優しさがにじみ出ており、教会のシスターか聖母様みたいだ。
それをぼくを想って泣き続けた3年でこうも変われるとはとても思えない。
変質した呪いの効果は個人で違うものなのだろうか?
ぼくが物思いにふけっていると、リディアとルチアが恥ずかしそうにしながらおずおずとぼくの服を引っ張った。
その態度に危険なものを感じたぼくは、動揺しつつも質問した。
「な、何?どうかしたの?」
「あ、あの・・・。リス様?その・・・魔界からのご帰還でいろいろお疲れでございましょう?」
「せめて私たちの身体を使ってお心をお慰めしたいのですが・・・」
「・・・は?」
魔界に行く前の2人からは考えられない、乙女のように純情な表情で言うものだから、ぼくは思わず間抜けな声を上げてしまった。
エリーのときみたく、いきなりぼくを求めてこなかったから油断してたのかもしれない。
とにかくここは丁寧に断らせていただこう。