姉妹と少年〜復讐者たち 39
透明になる魔法こそすごいが、戦闘力はまるでないクーとシャーレは足手まとい以外の何者でもない。
こんな状態で魔女の元に行くことなど自殺行為以外の何のでもなく。
ジェシカたちは苦渋の選択をしなければならなかった。
「ヒューストン。クーとシャーレをお願い。
魔女のところには私たちが行くわ」
「そ、そんなっ!?」
「嫌だよ、ボクたちを置いて行かないで、ママッ!?」
その言葉に2人の息子は離れたくないとばかりに母親たちにしがみつく。
だがこればかりはどうにもならないのだ。
ジェシカとフロールだって本当はひさしぶりに出会えた息子と別れたくなんてない。
まして彼女たちは心身ともに深いところまでつながっている間柄。
その苦痛たるや、想像を絶するものだろう。
だが子供たちのことを思えばこそ、この選択が1番いいのだ。
心を鬼にして会えて子供を突き放す2人の母。
それに対し、何かを考えるかのように沈黙していたヒューストンが静かにその口を開いた。
「・・・いいでしょう。ですが私も置いていくのは納得できません。
私も連れて行ってもらいますよ」
「な、何言ってるの、ヒューストン!?わかってるでしょ!?
魔法も満足に使えない今のあなたは足手まといでしかないのよ!?」
ヒューストンの言葉にアンジェリカが厳しい意見をぶつける。
だがヒューストンはその決意の瞳を揺らがせることなく反論した。
「大丈夫。それについては打開策があります。
テオさん、後で力を貸してください。あなたの力が必要なのです」
「え?ボク?」
突然話を振られて驚くテオ。彼・・・いや彼女は何をするつもりなのだろうか?
ジェシカたちはヒューストンから何を考えているか聞き出そうと思ったが、クーとシャーレがパーティから外されまいと再び騒ぎ出したので、結局彼女の真意を聞き出すことはかなわなかった。
――――
そしてその日の夜。
できるだけ早く力を取り戻したいということで、テオはヒューストンのいる部屋へと呼び出された。
部屋にはヒューストン以外誰もいない。
テオ以外では力を取り戻せないし、何よりヒューストンがテオ以外の入室を拒んだのである。
彼女はテオが部屋に来ると、誰も入れないようにしっかりとドアに施錠し。
魔法でのぞかれないようにうまく使えない魔法で封印を施した。
いつにないヒューストンの強引さに、テオは緊張しつつも彼女に尋ねた。
「ヒューストンさん。それでいったいボクは何をすればいいんですか?」
するとヒューストンは苦笑を浮かべると、返事の代わりにテオの顔の前に掌を差し出した。