姉妹と少年〜復讐者たち 16
「おう、いらっしゃい。オレにいったい何の用だ?
仕事を請けに来たのかい?」
見るからに海の男をイメージさせる、気風のいいギルドの男。
男の威勢のよさに少々圧倒されつつ、テオは小声でここに来た目的を話した。
小声で話したのは、自分たちのせいでこの町によけいな混乱が起こるのを避けるためだ。
「いえ、その・・・。この町で魔女が潜伏しているという話を風のうわさで聞きまして。
魔女に関することならどんなことでもかまいません。
教えていただけませんか?」
「魔女ぉ?・・・う〜ん、あのうわさ、もうそんなに広がっちまっているのかい」
魔女というキーワードに、男は困ったような喜んでいるような、何とも複雑な表情を浮かべた。
「『あのうわさ』?」
「ああ。実はこの町で妙な事件が立て続けに起こっていてね。
夜になると街の女たちが行方不明になったり、死んだはずの連中が起きて徘徊するって話で持ちきりなんだ。 あの魔女の仕業っていうにはおとなしめの事件なんだが・・・やってみるかい?」
その言葉にテオたちは判断に迷う。
路銀のこともあるし、この依頼を受けることには異存はない。
しかし問題はどちらの依頼も魔女が関わっているかもしれないということだ。
同じ時間帯に発生している事件だから、2つ同時に受けるにはパーティを2つに分けるしかないわけだが。
魔女が関わっているかもしれない事件に、戦力を割いていいものかどうか。
1つずつ受けるにしても誰かが残った依頼を受けるかもしれないので選択は慎重にしなければならない。
さて、テオたちはどうするのであろうか?
――――
「深夜の行方不明事件・・・か」
ここは港町シロクサにある宿屋の一室。
ジェシカはベッドの上でギルドからもらった書類を読みながらポツリとつぶやいた。
テオたちは少し話し合った結果、行方不明事件から1つずつ片付けていくことにした。
墓場のアンデッド徘徊事件のほうも気になるが、死人より生者を守るほうが重要だという結論に達したのだ。
もっとも敬虔な信者であるヒューストンは、迷える死者を救うことも同じくらい大事だったのでこの選択はかなり厳しいものだったらしいが。
「・・・この資料によると、事件が起きたのは数ヶ月前からみたいだね。
被害者の数はわかってるだけで30人近く。町娘や富豪、貴族の娘から貧民街のヤツにまで手を出してる」
「戻ってきた被害者や手がかりは?」
「どちらもなし。行方不明になったら最後、目撃情報すらないよ。
おそらくこの犯人の目的は・・・」
「金ではなく、娘たちそのものにあった、ということね」